お店招待席:やきとり「川上」(東京・調布)

1997.07.07 130号 6面

一五年前のオープン時には、焼酎、ウイスキー、日本酒、ビールなどを雑多に置いていたが、一〇年前、日本名門酒会を知り、それ以降、地酒に注力するようになった「やきとり川上」。

京王線・調布駅から延びる商店街の外れに立地し、「沿線の店として魅力ある店づくり」(川上洋太郎店主)をコンセプトに、「五坪の小さい店だからこそ雰囲気を大事にする」という店主の心意気が伝わってくる居酒屋だ。

酒を扱うと、どうしてもわがままを言う客が出てくるのは避けがたい。隣の席の客に絡んだり、のれんを下げても強引に押し入ってくる客などさまざま。

「お客を甘やかしてはいけません。一歩店に入ったら、カウンター内のこちらが指揮者。店の雰囲気を壊す客には、はっきり出ていくよう言います」という毅然とした態度にひかれて、常連化した客も多い。

「こうした酒を飲む場で自分を磨く場にして欲しい」と願うばかりに、つい若者に説教をとばすが、それでも慕ってやってくる。

「彼らが成長していく姿を見るのがうれしい」と相好を崩す。

山登りが大好きという店主。地酒の蔵元の話のついでに山の名前、温泉の名前が次々飛び出し、止まるところを知らない。ただ最近は、体力の衰えか、商売が忙しいのか、山へ行く回数がめっきり減ったようだ。

オープン当初は、地酒が五~六本だったのが、現在は、約一〇〇種揃える。

所属する名門酒会の酒が中心となるが、時間が許す限り蔵元を訪ね自ら味わい確かめたものを入れるようにする。毎月ベスト一〇を壁に貼り出すなど丹念に動向を探るが、「八海山、久保田は、黙っていても売れる。十四代は、直で入れているから売り出したい」と身びいきする自らを笑う。個人的には南部系、能登のものが好みという。    「これからは酒と肴のマッチングの時代」と唱えるだけに、おいしく食べ、おいしく飲む工夫には、労をおしまない。

メーンとなる焼き鳥には、和歌山から取り寄せる備長炭を使い、グラスは、酒が変わるごとに冷凍庫で凍らせたもの、濁り酒には、京都の老舗の竹細工屋に作らせた器を使う。

「面倒と片付けたらおしまい。原点に戻っただけ」とさらりと言ってのけるが、串を焼く姿には気迫がこもる。

やきとり「川上」

<創業>昭和57年

<所在地>東京都調布市布田五-一-一、電話0424・82・5040

<営業時間>午後6時~11時

<店舗面積/席数>五坪/一六席

<従業員数>五人(うちパート・アルバイト二人)

<客単価>三五〇〇~四〇〇〇円

<客層>二〇代後半~五〇代のビジネスマンが中心。二~三年前から女性同士やカップル客が増えてきた。

人気メニューベスト5と地酒ベスト10

★大根煮(油炒めしてから煮付けたしっかり味の含め煮)…………………450円

★鶏の唐揚げ(元肉屋だけに掃除がきれい、安心して食べられると評判)……700円

★お新香(キュウリ、大根、ナスなど特別な取り合わせではないが、手作り感が受ける)……………………………850円

★田舎煮(筑前煮風に炊いた盛り沢山の野菜)……………………………………500円

★里芋の煮物(おふくろの味として定番の人気メニュー)………………………750円

★オリジナル川上・奥播磨(純米吟醸、兵庫、+5.5)………………………650円

★八海山(本醸造、新潟、+10)……700円

★十四代・本丸(本醸造、山形、+2)500円

★久保田・千寿(本醸造、新潟、+5)550円

★〆張鶴・純(純米、新潟、+2)……700円

★十四代・純米(純米、山形、+2)…700円

★菊水・辛口(本醸造、新潟、+10)…500円

★手取川・白寿にごり(吟醸、石川、+5)…700円

★出羽桜・桜花(吟醸、山形、+2)…700円

★春鹿・超辛口(純米、奈良、+12)…600円

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