低価格時代の外食・飲食店 「クレープハウス・ユニ」仏バ社ノウハウ武器に独走
【外食 1997/07/21 日付 00131 号 04面 A】
Crepe=クレープは、フランス(ブルターニュ地方)生まれのファストフードだが、その歴史は日本(奈良朝時代)のそばと同じくらいの長い伝統があるというから、一〇〇〇年以上も前から食されているということになる。
パリに行けば、街角や公園の屋台でクレープの販売風景をよく見かける。いわば、日本市場で広く定着しているハンバーガー商品同様に、日常生活になじんでいるのだ。
ハンバーガーはバーンズでパティ(ビーフ)をはさんで食べるが、クレープは弾力性のある小麦粉の生地で、さまざまな具を包んで食べる。メキシコ料理のタコスに似たところがあるが、この商品はお好み焼きのように焼くところに特色がある。
商品キャラクターは、アグレッシブでハード(男性的)なハンバーガーに比べれば、はるかにスタティックでソフト(女性的)な雰囲気にあるが、しかし、文字どおりに女性の関心を引く、人気商品(客層の七、八割が若い女性)であるのだ。
クレープハウスUni(ユニ)は、この最大の大手チェーンで、北海道から九州、沖縄まで全国規模での店舗(FC)展開を推進中だが、ナショナルチェーンは同社だけで、フライドチキン同様にコンペティターは存在しない。
創業以来の独走を続けているわけだが、年間売上高約二〇〇億円。ハンバーガーチェーンなどに比べれば、まだまだ企業スケールは小さい。
このため、一八年後の西暦二〇一五年には国内二五〇〇店、海外二五〇〇店の計五〇〇〇店とマック並みのビッグな出店構想を打ち出しており、チェーン展開を積極化していく方針だ。
フランスはブルターニュ地方の郷土料理として生まれて、パリの王朝文化に取り入れられて発展し、現在では日本人のすし、おにぎり並みに深く日常生活に浸透している。
●食文化の粋
クレープはフランスの食文化、クレープ抜きにしてはフランスを語れないほどに、この国の定番フーズになっているのだ。
余談だが、フランスでは、毎年2月2日を「クレープの日」(シャンドルール祭)として、クレープを食べる日が設けられている。
これはキリスト生誕のころ、聖母マリアが神から、キリストが人類の光となることの予言を受けて、このことを祝してクレープを食べたとの言い伝えがあり、それがやがてブルターニュ地方で取り入れられ、宮廷料理を経て一七世紀のころから一般家庭に広まってきたというのだ。
つまり、クレープはおめでたく、縁起のいい“ホーリーフーズ”であるのだ。本格的なクレープ商品として日本市場に紹介されたのは、今から一七年前、昭和51年のことだ。
これはユニ・ピーアールと、六〇〇年の伝統をもつ仏バルペ社との業務提携で実現したもので、本場フランスのクレープが新たなファストフード商品として、日本市場にデビューすることになった。
バルペ社はフランス最大のクレープ専用機器とクレープのメーカーで、その技術と製品の質は高く評価されている。
プラスマイナス一度の誤差の高性能サーモスタット装備の特製鋳鉄のグリドル、高品質ブレンドのクレープ・ミックス。
クレープ・ミックスはクレープ生地の良しあしを決定する原材料だが、バルペ社の製品は良質の小麦粉に約三〇種のパウダー、その他をブレンドしたオリジナルで、焼き上がりは絹のようにソフトでかつ適度なコシがある。
●さすが本場
ユニはこのクレープづくりの「ノウハウ」を独占的に取得しているわけだが、未だにライバルチェーンが登場し得ないのは、ユニの商品特性に迫りきれないという事情による。
「七、八年くらい前になりますか、原宿あたりを中心にクレープブームが起こって、チェーン志向の企業が登場しましたが、ほとんどが消えてしまいました。クレープ・ミックスのグレード、技術、ノウハウがありませんから、本場フランス並みの商品が作れないわけです」(クレープハウス・ユニ営業部開発グループ坂本仁志氏)
バルペ社との業務提携後、昭和51年5月に東京・武蔵野市の吉祥寺にFC第一号店を出店した。若者の街吉祥寺にクレープの人気は広がった。
店の大きさは一五坪~二〇坪クラスが標準。月商五〇〇万円以上、粗利六八・五%。立地はヤング層やファミリー客が来街する商店(繁華)街、ショッピングセンターなど。
その後、FC展開は順調に推移し、現在では直営二一店、FC四三一店(平成6年度)の計四五二店をチェーン化する。
●雄大な構想
出店エリアは北海道から九州、沖縄まで全国を縦断する。シンガポール、香港、フィリピンなど海外にも出店(一〇店舗)している。
台湾にもFC出店していたが、これはオーナーの事情で撤退。しかし、FC希望があれば再進出する考えだ。
海外といえば、日本からの経済進出が著しいタイにも店舗展開していく方針で、将来的(西暦二〇一五年目標)には、欧米を含め二五〇〇店を出店する構想を打ち出している。
国内も同様に二五〇〇店を展開する計画だが、これは現有店舗が五〇〇店に迫るので、実質的には二〇〇〇店舗強を上乗せするということになる。
西暦二〇一五年まで一八年。年間一〇〇店以上の大量出店という計算になるが、これは新規FC展開に加え、フランチャイジー(加盟店)サイドでも多店舗化(最高八店という例もある)が進められてきているので、容易に達成できる数字とみている(ユニ・ピーアールフード事業部)。
商品はクレープ(二五〇~三八〇円)だけではない。平成2年からはイタリアンジェラート(二九〇円~)を導入しており、店舗での商品力を高めている。
店によってはクレープ六割、ジェラート四割という例もあるが、通常でもジェラートが二、三割の売上げを占める。ジェラートは天然素材一〇〇%のもので、商品のグレードは高い。
●業態を統合
店舗展開は通常タイプとして、この二つの商品を訴求していくが、今年度から新業態として「ヨーロピアン・カジュアル・ファーストフード」の複合店舗の出店も開始する。
これはクレープとジェラートに、ベルギーワッフル(一二〇円~)、イタリアン・クリスピーピザ(三八〇円~)を加えた形態のもので、いわば専門四業態の統合だ。
ショッピングセンターなど大型の商業施設を対象に出店していく考えで、年内に数店舗オープンする。
店舗展開はスクラップ、リニューアルと新規出店ばかりではないが、クレープ大手チェーンとして新たな市場創造に挑戦していく。
◇会社概要
・企業名/(株)ユニ・ピーアール
・チェーンブランド/「クレープハウスUni(ユニ)」
・会社設立/昭和41年7月(51年フード事業部設置。53年パイロットショップ出店)
・本社所在地/東京都中央区築地一-五-八(電話03・3543・2391)
・資本金/五〇〇〇万円
・代表取締役社長/嶋川弘
・従業員数/正社員三〇人、パート・アルバイト一〇八人
・事業内容/クレープハウスとヨーロピアンテーストのファストフード事業、イタリアンファッション、情報(PR、市場調査)事業
・決算期/5月
・出店数/直営二一店、FC四三一店(平成6年度)
・売上高/一八七億四〇〇〇万円(前年比八・六%増)