地酒と料理のおいしい店 「あ一心」名前より味で選ぶ

1997.09.01 134号 13面

新宿五丁目の交差点近く、明治通り沿いの雑居ビル地下にある。花園神社が目安。

階段を下りると、北は北海道から南は九州まで、全国各地の地酒三〇〇本近くの一升瓶が並ぶクーラーがひときわ目立つ。

「わざわざここまで出向いてくれるお客さんは、この店の個性、特徴をわかってくれております」(下山幸緒店長)というとおり、酒はもちろんのこと、料理に使う食材、水、調味料、器なども厳しく吟味している。水は米国製の浄水器で浄水し、化学調味料は一切使用していない。

「自然のうまさを損なわないように塩、味噌、醤油、砂糖、みりんの使いすぎに注意しております」

例えば醤油ひとつをとっても、刺し身、冷や奴、馬刺しなど、メニューによって五種類の醤油を使い分けている。居酒屋はあくまで酒がメーンで、料理は酒のおいしさの引き立て役。それだけに、酒と料理の相性に一段と気を使っている。

イカやタコの自家製塩辛、サッと湯通しし、ワサビと塩で食べる新鮮な水ダコ、海水につけてその日のうちに届くというオホーツク産の生ウニなど、まさに日本酒のためにあるようなメニューが並ぶ。

自慢の地酒は二〇〇種類以上だが、一部の過熱人気銘柄は見当たらない。

「最近は固定客が増え、本物の地酒を求めるお客さんが多くなっています。開店当初は有名銘柄の地酒を置きましたが、現在は名前ではなく、実をとって味で選んでおります」

店長自ら、毎年行われている全国の清酒鑑評会に出向き、好みの酒を探すという徹底ぶりだ。

一人でカウンター席に座り、店長に酒のノウハウを教えてもらうため来店する客も少なくない。

地酒メニューは店長の直筆で、和紙に二〇〇以上書き込まれている。このほか、店内には店長おすすめの地酒が短冊に書き込まれ、張られている。

おすすめの酒を注文すると、それに合わせた料理を提案してくれる。

ここにも、店長が目指す「酒とおつまみと会話という三味一体の店」の意気込みが伝わってくる。

◆「あ一心」(東京都新宿区新宿五-一七-五、新宿中央ビルB1、電話03・3200・1311)=営業時間午後5時~午前0時、無休、予算四〇〇〇円

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