トップインタビュー:シダックス・志太勤一社長
――9月5日、四〇歳の誕生日に社長に就任されました。抱負をお聞かせください。
志太 三年ほど前からシダックス本体の給食サービス部門を実質任され、収益アップ、内部構造の向上だけを考えて邁進してきました。社長就任で、業界の発展を考える業界リーダーとしての新たな役割が派生します。これが大変です。
会長は、「一人勝ちは長続きしない、いつか負けてしまう。共栄で産業が成り立ち、企業が成り立つ」をモットーに業界活動に力を注いできました。私の一番の課題は、自社の売上げ・収益アップと株主還元を考えるなかで共栄をどう図っていくかです。
また、産業給食は日本の高度成長とともに市場を拡大してきましたが、これも飽食で崩れました。しかし、今は健康というキーワードでこれまで以上に高いニーズが要求されています。
一方で、下請(アウトソーシング)という性質から、いかに経費を削減して利益を上げ、受益者へのサービスを向上させるかだけを考えて他産業に比べると給料ベースが低いなど、ややもすると従業員の待遇を犠牲にしてきた部分もあります。
産業の質を上げるには、そこで働く人たちのプロとしての自覚と能力を再確認し、さらに向上させて、収入の面からもプライドをもてる産業を構築することだと思います。
このようななかで、業界リーダーとしての当社の役目は情報システムなど経費をかけて最先端のシステムを構築し、競争原理あるなかでも情報公開できるところは公開をして業界共有とし、産業の近代化を推進することも一つ。と体の中では感じていますが、具体的にどうすればいいのかというと、まだ見えていません。
幸いにも、業界には二代目の若手経営者が集まって研修と親睦を図る会がありまして、交流もだんだん増えてきました。大きな財産です。
――新社長のもとで二〇〇一年売上げ倍増年商一〇〇〇億円の「ニューシダックス計画」がスタートしました。具体的に内容を教えてください。
志太 施策としては、海外への事業進出、技術導入、人材・食材確保を行う世界戦略の展開と、情報ネットワークシステムの確立、新マネジメント手法の確立、パートナーシップ経営の確立など新時代の情報とマネジメント手法による給食システムの確立。そして、メディカル給食の新システムの確立、高齢者向け給食システムの確立、環境・衛生のほか社会問題への対応施策などで時代の変化によるニューマーケットに対応する戦略の確立の三つを柱としています。
特に、売上げ面では産業給食中心の業容を病院給食の営業を特化して産業給食と病院給食の二業態が拮抗した体制を目指します。
計画では産業給食は市場成長率の二倍とみて一・五%の成長を見込みました。成熟したこの分野は既存の顧客に各社コストダウンを迫られており、業界をあげて共同購買やノウハウを出し合ってスケールメリットでコストダウンを図らなくてはいけないと思います。
しかし、病院給食市場は委託率が二〇%強で、アメリカの最高時の六五%を見ても、まだ三倍の市場があります。過去五年間の市場の伸びを見ても三〇%アップしています。この分野は、お互いに競争で行きたい。まだ、院外調理の問題や病院内部の問題が解決していませんがスケールメリットを早く構築したい。
当社はすでに「SMC」(シダックス・メディカル・キャフェテリア)システムを作っており、選べる食事のキャフェテリアを武器に、患者さんを健康にするという能動的な考え方でアクションを起こします。
キャフェテリアを日本で初めて導入し、食事に楽しさと健康を提案、革命を起こしてきたという当社の自負もあります。SMCは収益は低いですが、当社ならではの提案です。
――院外給食についてはどうお考えですか。
志太 病院給食の本来の姿は院外給食ではないと思います。また、今の技術ではセントラルキッチンを作って配送という望ましい形が整っていないので、病院を説得できない。ただ、技術の進歩がめざましいので、これからだと思います。
――ありがとうございました。
「環境問題は私のテーマ。給食産業は環境の問題をしっかり考えなくてはいけない」と、アメリカ在住時に子女のアトピーが食事からと医師に宣告されてから企業活動と環境の関わりに注力するようになった。アメリカ八年滞在の経験は人脈構築など自身の大きな資産となっている。
最近特にアメリカから感じることは「理論武装」。日本でもPLが浸透すれば訴訟がもっと頻繁になるやも知れない。トップも従業員も正当性を主張できる訓練をしなくてはいけない。
「能動的なアクション」で二〇〇一年の目標達成ををめざす。
(文責・福島)