中部版:シェフがアピールするイタリア料理 ウン・ゴッチョ 後藤オーナーシェフ
あの第一次イタめしブームはバブル全盛期も手伝っていいタイミングで広まった。そして今、第二段階へ。
料理自体は決して新しくなったわけではないけれど、客の知識が増えたのが前と異なる点ですね。本物を見定める力がついて、反応が感じられるのは料理人にとってはうれしい限りです。
なぜこんなに人気になったか、ですか。イタリア料理はフランスの装飾を施した豪華けんらんな料理に比べて日常のちょっとした贅沢でいいという簡素なもの。そのプレーンさが時代の風潮とマッチしたのではと思います。でもこのシンプルがゆえに、実にむずかしい。ごまかしがきかないっていうことですから。
二六歳の時それまでやっていたフランス料理に疑問がわいてきたんです。高級感を演じているだけではないかと。そして、生クリームやバターたっぷりのソースではない「ごちそう感覚」がイタリア料理にはあると確信を持ちました。
日本人の好む味でもあるし、もっともっとポピュラーになるのではと思いましたね。どんどん本場に行って料理を味わい、周りの文化性もいっしょに持ち帰ってほしいです。料理は皿の上の表現だけではないですから。
そうそう、一つ苦言をいわせてもらうならイタリアと名前を入れただけの居酒屋形態の店が増えていますが、この傾向は業界全体の足を引っ張ることになる。非常に心配しています。
料理人としては当然だけれど、おいしくて安全な食材にこだわるのが原点。確かに手間もお金も時間もかかるけどこれこそ大切なんです。
以前はフランス料理人が基礎を学んだ後、イタリア料理へ転じるケースが多かったんですが、今は最初からイタリア料理を修業し始めた中堅が増えていますよ。ちゃんと独立した業態として育っている証拠でしょう。
イタリア料理は決して簡単なものではなく、地方性や文化性を十分に理解していないとできないものなのです。
私の場合最初、本場の料理をそのまま日本で提供することにこだわった時期もありました。でも結局、食材も違い気温や湿度が異なるなかで同じ料理を提供するのはどだい無理。では、自分なりに消化して、日本で日本人に味わってもらえるイタリア料理を完成させようではないかと思い直したんです。
私には今がとても充実期ですね。
>プロフィル<
一九五九年、瀬戸で生まれる。高校卒業後、リゾートホテルレストランでフランス料理を学ぶ。二六歳で上京、その後イタリアへ渡り二年間修業を積む。帰国してバブルがはじけた平成5年12月、「ウン・ゴッチョ」をオープンした。