トップインタビュー:会津・喜多方ラーメン坂内「小坊師」中原昭社長

1998.02.02 145号 7面

会津・喜多方ラーメン坂内「小法師」。長たらしいチェーンブランドだ。マスコミでもよく取り上げられている喜多方「坂内食堂」の店主坂内新吾氏の協力を得てのラーメンビジネスで、小法師は坂内食堂秘伝の味を踏襲している。

小法師とは会津地方の民芸品で三㎝ほどの土人形。“起きあがり小法師”と称されており、転んでもすぐに立ち上がるので、念願成就の縁起物として重宝されている。

麺食のネーミングは事業発展の願いを込めている。「繁盛店製造業」。絶大な自信からくる言葉だ。沈着冷静の自然体の人。中原社長は「頭も悪いし、体力もない」と謙遜するが、経営の分かる思慮深い人物という印象を受ける。

コストのかかるCKは持たない。信頼のできる取引企業とチームを組んで、加盟店を支えていく。麺食はその仲介者。常に客の顔を見てベストのものを創造していく。これが麺食のビジネスと言い切る。勝算を見据えたうえの企業哲学だ。

(文責・しま・こうたつ)

――街中で小法師ラーメンをよく見かけるようになりましたが、現在何店くらい出されておりますか。

中原 今年5月で会社設立一〇年になりますが、現時点で直営八店、FC四八店の計五六店を展開しております。

――平均すれば一年当たり五、六店舗、決して多い出店数とはいえませんが……。

中原 そうかもしれませんが、私どもは数を求める「開店屋」ではない。加盟金、ロイヤルティー欲しさのチェーン展開ではなく、着実に出店していく。

あえて言わせていただければ、「繁盛店製造業」ということでして、確実に儲かる店づくりを進めていく、数を先行させていくのが目的ではないということです。ですから、私どもの自慢は現在までに一店舗もの不振店、スクラップ店も出していないことです。

――FCシステムは本部と加盟店が強い信頼関係で結ばれていて、両者がそれぞれの役割を果たしていかなくてはならないわけですけれども、本部としてはどういうスタンスでおられますか。

中原 結論から言いますとコストのかからない本部機能、プロとしての持ち味を生かした分業体制。目的はお客さんに満足してもらい、その結果として店が継続して儲かっていく。くよくよと能書きは言いません。店を見てもらえば分かることです。一番強調したいことは、私どもは奇をてらったり、特別なことをしていないこと、自然体で当たり前のことをやっている、ただそれだけのことです。

――継続はパワー、当たり前のことを続けることがむずかしいわけですが、この点はどういうようにお考えですか。

中原 私は頭も悪いし、体力もない人間ですから、元気で能力のある人間に働いてもらうという考え方です。また、外においては信頼できる企業と一体化したチームを作る。つまり、自己の得手不得手を知って、できる人間に協力してもらう。無理して自分で何でもやろうとすると、事は早く進むかもしれないが、行き過ぎて失敗も多くなる。

企業としての考え方もそうです。出店計画にとらわれたり、店舗が増えたからといってCKを所有したりということになりますが、これは先行き企業体力を削ぎ、経営に負担をかけることになるのではないかと考えます。出店をノルマ化すると中身を考えず、単に店を出していくということだけになる。

CKは外見的にはカッコがいいかもしれませんが、これは継続して設備、人件コストがかかることになり、やがて本部収益を圧迫していくことになる。FC展開は客のため、加盟店のためです。本部が無理すれば、いずれは価格に跳ね返り、加盟店に負担がかかっていくという図式にもなる。

――なるほど。

中原 事業はまずコストを抑えて収益を上げる。そして、深耕をしていく。余計なこと考えない、しないということが大きなポイントです。常にどうコストをセーブし、生産性を高めていくかを考える。スーパーのイトーヨーカドー、傘下のファミリーレストランデニーズは、この考え方で大きく成功しています。

店舗は一〇〇%儲かる店づくり、加盟店の人間性、事業に対する意欲は重要なファクターです。それから立地。立地は確実に客数の取れるところ、一年を通して人の流れがある場所です。決して妥協しない。いい場所は物件取得に多少コストがかかるかもしれないが、しかし集客力が発揮できれば、それだけ償却も確実になる。

――立地が悪くても店の個性、商品力で、客を呼び込むということもあると思うのですが、この点は厳しいですね。

中原 もちろん投資と収益のバランスを考えなくてはなりませんが、立地の確保は短期に資本を回収し、経営を継続させる意味では妥協できない点であるのです。

――加盟店においての考え方はどうですか。いくら商品力があって、いい立地が確保できたとしても、本部に頼り切りのフランチャイジーでは、いい結果は出ないと思いますが。

中原 事業意欲があるかどうか、私どものシステムに共鳴して信頼のパートナーとしてやっていけるかどうか、加盟時の審査は厳密です。

問題は自らが店に出て現場経験を積み上げていけるか、それによって部下を育てて、次の目標にステップアップできるかどうかです。一人でも、パパママ経営でもいつまでもこの状態では、事業は発展しない。

起業家精神で人を育てていかないと自らも楽にならないし、店を増やしていくこともできない。店を二店、三店とサブチェーン化していく、これが事業の面白さであるし、ビジネスを発展させていくプロセスになると思うのです。私どもにはすでに多店舗化し、またそれを目指しているオーナーさんも多いのです。

――今後を期待します。ありがとうございました。

(株)麺食(会津・喜多方ラーメン坂内「小法師」)

所在地/東京都大田区大森北二―一四―二▽電話/03・3298・6161▽会社設立/昭和63年5月▽資本金/一五〇〇万円▽代表取締役社長/中原明▽店舗数/直営八店(年商七億円)、FC四七店(同四六億円)=九七年5月期

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