うまいぞ!地の野菜(1)茨城県現地ルポおもしろ野菜発見「レッドポアロー」
「いつのころから赤いネギになったのかって言われても、わかりません。昔からこの地では、赤ネギをごく普通のネギとして食べていましたから」と広木操さん(六四)。赤ネギ栽培農家で結成された「桂村レッドポアロー研究会」の一員である。
水戸市から二〇㎞北上した那珂川流域にある桂村一帯は、長年にわたり河川の土砂が沈積してできた沖積土地帯にあり、赤ネギが沖積土に適することからごく自然に栽培されていた。この古くから地のネギとして親しまれていた赤ネギは、もともと桂村の隣町になる上泉町が主産地だった。だが、これを一五年来、他産地との差別化で商品にしようと取り組んできた桂村が、今では主産地となっている。
「古くからある赤ネギは、赤というよりピンクに近い色。商品化のため試行錯誤の結果、一〇年前、今のような鮮やかな赤いネギに定着させました」
赤ネギの収穫サイクルは、9月に種を播き、長い冬を越して3月に借植し、7~8月定植、11月ごろから翌年1月末までが収穫という実に長いもの。
鮮やかな赤を得るために、特別な品種改良はしていないという。畑の中で淡いピンク、濃い赤と不ぞろいな色の中から、ひときわ鮮やかな赤をピックアップし採種、植えては選別、採種の繰り返しで得た結果である。一年後に結果が出るという息の長い作業は、期待と忍耐の繰り返しであった。
こうして生まれた赤ネギは「レッドポアロー」とネーミングされ、商品として地元商圏を中心に宅配や直売所を通し流通している。
一雨来そうな雲行きのなか、広木さんはネギ畑に向かう。幾重にも続く畝には、青々とした葉が勢いよく天に伸びている。「今朝の雨で土がゆるみ、ネギの身がふやけて味が変わるから、普段は抜かないよ」と言いながら一本ずつ丁寧に引き抜く。
「うちのネギを食べたらよそのネギは食べられないね。毎日食べてもあきないし、おかげで風邪もひかないよ」と、広木さんは、生を刻み、鰹節と醤油をかけて食べるのを常食にしているという。
「レッドポアロー」は、長い冬を越しているため柔らかく、甘い。また、赤い根ばかりでなく、青い葉も一緒に食べられ、土地の人には、鍋物、酢の物、ぬたなどで親しまれている。
「赤い根が逆に受け入れてもらえないこともあるんですよ」と各地のデパート、スーパーなどに各種イベントを仕掛けては、地元産物のPRに努める営農資材センター長の高堀護さん。「食べてもらえばきっとおいしいと言ってもらえる味」と自負する。
ただ最近は、赤ネギに参入する農家が増加し、長い年月をかけ「レッドポアロー」を作り上げてきた広木さんを含む研究会は、「品質にバラツキが出ること」を危惧する。こうした動きが出てきたのは、赤ネギに商品的魅力が出たということだろうか。
■生産者名=広木操(茨城県東茨城郡桂村粟八〇八、電話029・289・3591、F AX029・289・3591)
■販売方法=宅配。かつら営農資材センター(茨城県東茨城郡桂村阿波山二七三七、電話 029・289・2711、FAX029・289・4302)からも宅配が可能。
■価格=一㎏四〇〇円から。最少注文単位は三㎏から。送料は着払い。