中国料理に新潮流 “ヌーベル・シノワ”店紹介 「キハチチャイナ」

1998.02.16 146号 4面

東京は千駄ヶ谷の「キハチチャイナ」は、わが国のクロス・カルチュアル・キュイジーヌの先駆者である熊谷喜八氏がプロデュースしたヌーベル・シノアの中国料理店。“キハチ流・新東京チャイニーズ”を標榜し、女性層から圧倒的な支持を集めている。

小人数で楽しめる小皿コース料理のほか、白と薄緑を基調とする明るい店内配色、リーズナブルな価格設定、充実したドリンク類が売り物で、オープンから半年、一九五坪・一八〇席で日商二〇〇万円・月商六〇〇〇万円と絶好調に展開している。

キハチ流・新東京チャイニーズの題目はこうだ。

(1)少量多種類の小皿コース料理/小人数でも気軽に入れて多種類楽しめる、女性好みの小皿コース料理を志向。コース料理で接客サービスも繊細。

(2)無国籍料理シェフ×中国料理シェフの融合/「素材の持ち味を最大限に生かす」が絶対条件。中国料理の伝統技術を尾崎邦男(キハチチャイナ総料理長)が守り、熊谷喜八が素材そのもののおいしさをさらに引き出すアレンジを加え、ライト感覚に完成させる。

(3)中国大陸制覇のメニュー/四川、広東、北京、上海と中国料理には地域による大きな隔たりがあるが、特定の地域にこだわらず各地方の特色を生かした料理を提供する。

(4)五味、五材、五色の伝統/中国料理は医食同源が素。五味(辛苦甘酸鹹)、五材(肉魚家禽野菜乾燥材料)、五色(赤青黄黒白)をバランスよく食事に取り入れることが健康かつ、美食の条件といわれている。こうした中国の文化と伝統を守りながら、東京の文化や香りを加える。

(5)季節感、日本の素材へのこだわり/世界各国、日本全国から食材の集まる東京市場。パワーあふれる東京の特徴を生かし、新鮮な素材と旬にこだわる。季節の野菜をたっぷり盛り込んだ料理を提供する。

以上が料理にかかわる概ねのポイントであるが、同店で特筆すべきはやはりカジュアル感覚の店舗内装であろう。

白、薄緑を基調とする店内配色と全面オープンキッチンは従来にない開放感を演出し、ワインなどのアルコール類が並ぶバーカウンターと店頭に独立した受付カウンターはさながら米国のカジュアルレストランといったところだ。

なかでもオープンキッチンには中国料理ならではの工夫も見られる。直火を扱うメーン厨房は全面ガラス張で、料理人は客席に向かって鍋を振る。お客は客席に座ったままで、炎の料理と呼ばれる中国料理の手さばきを見ることができるのだ。ガラス張りだから当然、排熱や油煙が客席に流れることはなく、ガラス張りでないサブ厨房は電磁調理器を導入してこれを防いでいる。

オープンキッチンに入る二五人の料理人は中国料理四流派から集まったもので、「料理技法の情報交換ができるので、皆、以前よりも知識と想像力が高まっているようだ」(松島料理長)とのこと。

「キハチチャイナ」のコース料理は次の通り。

・ランチタイムコース/一五〇〇円、二五〇〇円、五〇〇〇円、飲茶セット二五〇〇円

・ティータイムコース/飲茶セット一五〇〇円、飲茶セット二五〇〇円

・ディナータイム/五〇〇〇円、七〇〇〇円、一万円

なお「キハチチャイナ」の二号店は、東京・銀座に本年4月オープンの予定。

◆キハチチャイナ千駄ヶ谷店/東京都渋谷区千駄ヶ谷二-一一-一、電話03・5770・1555/開業・平成9年9月/坪数席数・一九五坪一八〇席/営業時間・午前11時30分~午後2時30分(ランチ)、午前11時30分~午後2時(飲茶)、午後2時30分~5時(ティータイム)、6時~9時30分(ディナー)、最終時間はラストインタイム。営業終了時間は、平日が午後10時30分、日・祭日が午後9時30分/客単価・ランチ二五〇〇~三八〇〇円、ディナー六〇〇〇~七〇〇〇円/一日来店客数・平日二六〇~二七〇人、日・祭日三四〇~三五〇人/月商・六〇〇〇万円/客層・二〇代を中心にした幅広い年齢層の女性が九割を占める/従業員数・厨房二五人、ホール一五人(アルバイト一〇人)

◆料理長・松島徹氏=昭和34年、東京生まれ。三八歳。兄が洋食のコックだったことから影響を受け料理人を目指すが、同じ洋食ではおもしろくないと中華料理の道を選ぶ。二四歳でキャピトル東急ホテルに入り、師とする脇屋友詞シェフに出会い、以後リーセントパークホテル、トゥーランドットで薫陶を受ける。縁あって「キハチチャイナ」の料理長に就き、季節感あり、食材の持ち味を生かした「おいしい料理」作りに奮闘する。

■「季節の五種前菜」

「新筍の川海苔和え」は、タケノコをサッと油で揚げ、塩味にし四万十川の川海苔で和える。

「チャーシュウのハチミツ和え」は、チャーシューをはちみつで和え、黒コショウ風味で。

「焼き鴨」は、鴨肉にソースと水あめを塗り、一日干して窯で焼き上げる。

「白魚のサクサク揚げ」は、白魚に片栗粉をまぶし、カラッと揚げ、ネギと唐辛子で和える。

「ハチノスと菜の花の山椒風味ソース和え」は、牛の胃袋と菜の花をゆがき、四川のサンショウ風味ソースで和える。

■「絹笠茸入り茶碗蒸し」

茶碗蒸しに絹笠茸を入れ、シャンタンスープをはる。

■「帆立貝とセロリのガーリック炒め」

刺身用の新鮮なホタテとセロリをニンニクで炒める。

■「甘鯛のサクサク ウロコ揚げ」

アマダイの腹のあたりにウロコをつけたまま油で揚げると、ウロコが自然に立ってくる。これをまるごと食べる。

■「特上牛ロース肉のシャブシャブ キハチチャイナ風」

肉を軽くボイルし、中華風たれで。

■「甘味たっぷり!たらば蟹の淡雪風」

タラバガニとアワビ茸スープに卵の白身をちらす。

■「いろいろ野菜入り焼きソバ」

仕上げは、広東風に中国醤油を使い、濃いめの色づけをする。

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