食の視点 これでメニューは大丈夫(6) 女性を狙え
◎目立ちたがり◎
「気をつけよう、甘い言葉と暗い道」という方面の“女性を狙え”ではなくて、フードサービスのターゲット、対象客層として女性を意識しようということだ。ファッションでも、飲食でも、映画・美術の分野でも、現在の流行、トレンドを満喫しているのは女性と子供なのだ。女性や子供の気を引けなければ、新製品の成功はない、と言えるほどなのだ。
女性は目につくものしか購入しない。目につくものの条件とは? 第一にパッケージなど外見の美しい目立つもの、可愛いもの。次が得なもの。
そして、いつもより安いとか、量が多くなっているとか、おまけが付いているなどの表示がついたもの。
最後に、知っているもの。マスコミ、テレビで宣伝していた、新聞の広告で見た、だれかが良いと言っていた‐‐などである。
◎反射神経◎
目につくものを、ほとんど反射的に買い求めてしまう女性の購買行動を、男性から見れば衝動買いというのだろうが、女性の中には家庭、自分、家族など守らなければならないものがたくさんあって、その守る意識の一つがこうした反射的購買行動につながるように思える。
というような心理学的背景説明はどうでもいいとして、現在の主要な対象顧客に女性をしっかりと入れておくこと、また女性の物を買う動機が、こうしたことからくるということを認識しておくと、メニュー開発に役に立つのだ。
料理内容だけでなく、メニュー表のデザインとか、盛付け、皿やフォークナイフの選定などにも役に立つ。
マーケティングだのマケットリサーチだのが、製造業の新製品開発のヒントになっていることはよく知られているが、メニュー開発も同じことだ。
お客の志向・好みを知らなくては、何もできない。と同時に、お客の購買の動機、レストランへの来店の動機を深く考えることも必要だ。
◎敵を知る◎
お客様は、決してフードサービスの店舗の敵ではないが、攻略すべき対象ではある。自分の店がどのような顧客を対象としているのか、あるいは、しようとしているのかをはっきりと知っておかないと、確実なメニューの開発はできない。対象をしっかりと決めて、その対象となる顧客のあらゆる性格を調べるのだ。
顧客の性格とは、どのような料理を食べたいと思っているのか、また外食頻度、外食傾向が最初にくることは間違いないが、次に職業、収入とか、家族構成、ライフスタイル、趣味などがくる。
これらを知ることによって、どの時間帯で、どれくらいの値段の、どのような料理を、どのようなスタイルとお店の雰囲気で出せば良いのかを想像することができる。
例えば、デザイナーやプランナーなどのように自由業に近い職業の住民あるいは通勤人の多い地域では、ちょっとファッショナブルに決めたヌーベル・ジャボネーゼのメニューが良いかもしれない。こうした人達は、グルメ情報にも詳しく、トレンドに乗ることに違和感を感じない。また、それなりの収入もあり、外食頻度もかなり高い。
ヘルシー、美しい器、少量を種類多く、などはまさにトレンドであり、彼らの満足を確かに捉らえることになる。もっとも、価格設定を間違えても、またその土地の性格を誤解してもいけない。
夜間の人通りの少ない場所でディナー専門のメニューを勢揃えさせても仕方ない。デザイナーの卵だからといっても、収入はそれほど多くはない。そこへコースで八〇〇〇円もするようなメニューを出しても、これまたしょうがない。
◎自分を知る◎
しかし、相手のことばかり知ってもまた片手落ちで、再三にわたって言うことになると思うが、自分のできることとできないこと、しても良いこと、してはならないことをきちんと整理して、確認しておかなければならない。つまり敵を知り、己を知るのだ。
これをやっておかないと、ひどい失敗を何回も繰り返すことになる。