1級料飲サービス士探訪 ホテルオークラ・ロンド杉本祐支配人に聞く
サービスは大変魅力のある仕事です。サービスによってお客さまに喜んで帰ってもらえることは大変うれしいことです。完璧なご満足を目指して努力をしています。お客さまが食事に来られる。料理を出す、コーヒーを出すのはこれは業務でサービスではありません。いかに楽しい気持ちになって頂き、来て良かったという感じを持ってもらうようにするか、これがサービスです。
かしこまることがサービスでは無いと思います。お客様の欲しい物を先手先手と打つ気配りをし、そしてお客さまが店からいかに注目されているかを感じてもらい、期待以上の良い待遇を受ける、これがサービスだと思います。
手法は一つではありません。いろいろなお客さまが来られます。このレストランでは、お昼はファミリー、夜はカップルが主体です。
私はできるだけテーブルを回りお客さまの意向を感じ取るように心掛けています。しかし、どうしてもだれかがどこかでミスをします。まず謝ります。おわびのしるしとして、こちらから提供できるものをお客さまに選んで頂くようにしています。アイスクリーム、シャーベット、デザートの内容についてもお客さまが選び、納得して頂いております。
ご不満をすぐ言って下さる方は良いのですが、食事が終わって最後の清算の時にこちらのミスを指摘されるのは対応に苦労します。一方的な私どものおわびのしるしでは話がこじれます。失敗をしてもできるだけ誠意をもって対応します。
人間は完璧ではありません。お客さまにそのプロセスからわれわれを理解して頂き、またわれわれもより人間的なサービスで接する。失敗をプラスに転じることができる、これがこの仕事の特徴ではないでしょうか。この失敗の経験が後輩の教育に役立ち、元気づけることになります。
部下や、調理の失敗を皆で研究、最高の具体策で対応できるようにと考えています。
ある時お客さまからワインについて質問を受けました。しかし、答えることができませんでした。この悔しさからワインの勉強を始めソムリエの資格を取りました。
サービス士の認定受験は私はアルバイトからスタートしていたので遅れました。しかし、サービス士の資格取得によって自信を深めることができました。洋食とともに和食、中華料理も加えて勉強をしたいと思っています。テーブルマナーの講師の資格も取りたく思います。
私どもは船橋のレストランとして地域との結び付きを大切にしています。そごうデパートとタイアップしてテーブルマナー、ワインの勉強会など、ご婦人のカルチャセンターの役を今以上引き受けていきたい。
料理長とは何でも話せる仲間です。みんなで論争し、研究してお値打ちのファミリーメニューを作りました。一円でもプラスになるように努力をします。
現在は適切な、優れた判断力、早い決断力、豊かな人間性が求められています。私はそのような管理者になりたいと思います。
サービスの仕事は、夢を持って喜びを与えられる業務です。従業員にやる気を起こさせ、職場を活性化し業界に協会を通じて貢献したいと考えます。
(聞き手・野崎正)
[参考]資格認定機関=財団法人日本ホテル・レストランサービス技能協会(東京都中央区銀座八-一二-六、小野商ビル2F、電話03・3545・5481)
プロフィル
すぎもと・ひろし=昭和61年ホテルオークラエンタープライズレストラン、ラ・ロンド船橋店にアルバイト勤務。62年ホテルオークラエンタープライズ入社、ラ・ロンド船橋店勤務。平成4年ソムリエの資格取得。8年料飲サービス士一級取得。現在、ホテルオークラレストラン、ラ・ロンド支配人