デザート カリフォルニア冷凍イチゴ最新事情(1)
スーパースター、マイケル・ジャクソンのシェフを勤めた経験のあるマーニー・ナイルさんは、ロサンゼルス市でも指折りのベーカー(パン職人)。彼が最も得意とするのは、オーガニックの全麦粉やナチュラル素材を駆使した独創性豊かなパン作り。最近、出版されたマーニーさんの著書「スイート&ナチュラル・ベーキング」にも、彼が考え出したユニークなレシピがたくさん紹介されている。
「ヘルシー志向とグルメ志向の両方を取り入れたパン作りを実践したいというのが、ベーカリー・ビジネスを始めたきっかけです。ヘルシー志向というのは、この店では有機農法で栽培された全麦粉に、果汁や大麦の麦芽や本物のチョコレートなど、バラエティーに富んだ天然の甘味料を使っているからです。缶詰類は一切使っていませんし、フロスティング(砂糖衣)やフィリング(パイの詰め物)もすべて自分たちで作っています」と爽やかな笑顔を見せて話すマーニーさん。
一九八九年にビジネスをスタートしてから、あっという間にベーカリー・ショップが四店に増えたが、最近ホールセール・ビジネスの方が忙しくなってきたので、小売の方を二店に縮小したばかりとか。今回取材したフェアファックス・アベニュー店がセントラル・キッチンの役目を果たしており、サンタモニカにある支店や、市内の有名ナチュラルフードストア、ヘルスクラブ、大きなビルの一階に入居しているフードショップなどに、ここで焼かれたパンやケーキやクッキーが毎朝配達されている。
とはいっても、マーニーズ・ベーカリーのケースに並んでいるのは、マフィンやチョコレートチップクッキー、チョコレートパイ、アップルパイといった、どこにでもあるアメリカのデザートやパン。見た目ではとてもフランス菓子や和菓子にかなわないが、ノンファットのパイや、砂糖、卵、ミルクを使っていないケーキなど、アレルギー体質の人や、健康上、あるいは宗教上の理由で食事を制限している人にとっては、泣きたくなるほどうれしい特別レシピ商品が盛りだくさんにそろえられている。
マーニーさんは、シェフ時代からカリフォルニア冷凍イチゴの大ファン。
「こう見えても私は冷凍イチゴの熱心な支持者なんですよ。というのも冷凍イチゴは素材として、パンやケーキ作りに非常にむいているからです。その理由として、冷凍イチゴは、オーブンで焼いている時、中から果汁が出てきません。これが生のイチゴですと、縮まって中の果汁が溢れ出し、出来上がりがベタッとなってしまいます。それに焼き上がった時、潰れて茶色に変色している場合が多いので、冷凍イチゴの方がずっと扱いやすいということはいえます。さらに冷凍イチゴは年中手に入るという利点があります。それに熟した時に冷凍されるので、いつでも果汁がたっぷりしていますね」
このようにマーニーさんは、カリフォルニア冷凍イチゴがいかにパンやケーキ作りに適しているかを力説する。
現在、マーニーズでは、スコーンとノンファットのコブラー(パイに似たデザート)と、いま全米で大人気のスムージーにカリフォルニア冷凍イチゴを使っている。仕入れているのは無加糖のホールイチゴで、必要に応じてスライスしたり、ピューレーを作っているそうだ。
「私が冷凍イチゴを気に入っているのは、クオリティーが一定していて常に甘いからです。パン作りは非常に科学的な作業で、毎回同じレシピ、同じベーキングソーダ、同じ小麦粉を使っても、中に入れるフルーツの形や大きさ、甘み、堅さが違えば、まったく違うものができてしまいます。そういう意味で、冷凍イチゴは一〇〇%信頼できる素材といえますね」
マーニーズでは、イチゴ類を定期的にローテートしているので、三ヵ月後には冷凍イチゴのマフィンが登場するかも知れないというマーニーさん。「ブルーベリーやリンゴのマフィンは珍しくありませんがイチゴのマフィンは非常にユニークだと思います。私にとってカリフォルニア冷凍イチゴは、創造性を刺激するエキサイティングな素材です」。