注目の外食ベンチャー たこ焼きチェーン「宮たこ」、雰囲気は洋風商品は和風

1998.05.04 151号 16面

宮たこの創業は一昨年。宅配ピザの「ミラノピザ」チェーンを手掛ける(株)ビックの細谷俊夫社長が、宅配ピザ市場の店舗飽和化を見越して新事業を模索、ピザで培った粉の配合ノウハウを生かすことで、たこ焼き店のチェーン事業化に至った。

「たこ焼きは和風メニューなので、安定した売上げが確保できる。初期投資も低い。だが、そういったメリットが足かせとなって、いままで店舗オペレーションの近代化やメニュー開発、計数管理に遅れを来してきた。悪くいえば適当にやってもある程度は儲かるのです。要所要所を改善すれば、安定した繁盛店づくりが可能なはず」と細谷社長。

「独立以前の食材問屋勤務時代から、長らくたこ焼き店業界とつき合ってきましたから間違いはありません」と自信満々に話す。宮たこは、たこ焼き店の未来像をコンセプトに立ち上げたというわけだ。

同店のメニュー構成はたこ焼きだけとシンプルそのもの。サイドアイテムに数種類のドリンクがある程度だ。宅配ピザ事業でのノウハウを生かしているだけあって、粉の配合は一〇種類以上。和風だしと合わせて、外側カリッ、中身トローリの食感を売り物としている。たこ焼きは直径四五mmと大きめで、タコも六gと一般的以上にし、そのほかに天カス、ネギ、ワケギの具材が入る。

「原価率は三二%と高めに設定しています(一般的には二〇%)。和風メニューはなじみがあるだけに、お客は味の良しあしを判断し易い。原価率を高めて高品質を追求すれば必ず支持されます。また、原価率が高いたこ焼きほど、冷めてもおいしく食べられます」

味については、「従来は、野菜をたっぷり入れて甘みを出したボソボソのたこ焼きが主流でしたが、『白川』さんや『京たこ』さんの台頭で、トローリとした食感とだしを効かせたしょっぱめの嗜好が高まっているようです」という。

栃木県宇都宮市を拠点に展開する「宮たこ」は、“雰囲気は洋風、商品は純和風”をテーマに掲げるFFスタイルのたこ焼きチェーン店。低投資と安定した売上げが訴求ポイントで、一昨年前に事業化したところ、景気の影響もあり多くの加盟希望者を集めている。

営業に関しては、従業員を原則一人とし、アルバイトでも簡単に焼けるよう、テフロン加工の鉄板を特注で採用している。また、テキヤイメージを払拭しFFイメージを高めるために、店舗の洋風化とQSCには徹底的にこだわっている。

「宮たこが狙う客層は、ハンバーガーに慣れ親しんで育った若年層と若者層。そのために、マクドナルドをイメージして洋風な雰囲気づくりとQSCに徹しています」

オープンから一年目を迎えた昨年の夏場に、展示会に出展してFC募集したところ、好評で二〇軒ほどの希望者が集まり、瞬く間に三店舗のFC出店が決定した。

「宅配ピザのチェーン募集出展では強引に勧誘しても、話をできるのはせいぜい一〇軒程度。宮たこのときは勧誘しなくても、話を聞きたいという希望者が多く現れました。景気の影響だと思いますが」

ちなみにFC出店した場合の開店投資額とモデル収支は次の通り。

開店投資額=四〇〇万円+物件費、加盟金=一〇〇万円、保証金=五〇万円、厨房機器備品=一五〇万円、開店準備金=五〇万円、開店販促費=五〇万円

<モデル収支>月商=二〇〇万円、原材料費=六四万円、粗利益=一三六万円、人件費=六〇万円、家賃=一〇万円、光熱費=六万円、のれん代=五万円、販促費=二万円、減価償却前利益=五三万円

これはテークアウト専門のパッケージで、ほかにイートイン併設のパッケージもある。

「たこ焼きはワンパック商品。すぐに皆で分けて食べられる強みがあります。しかも和風だから人気も根強い」と意気込む細谷社長。当面は三〇店舗の出店が目標だが、いずれは一〇〇店舗ぐらいにしたいという。

数年前、東京に京風たこ焼きが現れて脚光を浴びたが、「バブル後の大衆志向に便乗しただけ」とのブーム的な見方が強かった。が、いまでも支持率を維持している店は数多い。企業化したチェーンは“新興和風FF業態”なる地位をも確保している。

宮たこは、それらの流れに追随するものだが、地方都市発のモデルケースとして注目に値する。

業務用卸問屋時代の経験をもとにミラノピザチェーンを起業し、ブームに乗って栃木県内に一大勢力を築いた細谷社長の次なるコンセプトが宮たこ。経験と直感に基づくニューコンセプトが今後どのように展開するか見物だ。

●個数=<一位>八個入り(四八〇円)、構成比約六〇% <二位>四個入り(二六〇円)、構成比約二〇% <同>六個入り(三八〇円)、構成比約二〇%

●ソース=甘口と辛口の比率は七対三。

●マヨネーズ=プレーンマヨネーズと辛子マヨネーズの比率は八対二。

●トッピング=鰹節、サクラエビ、青海苔があるが、全部乗せが圧倒的。

◆ほそや・としお=昭和25年、宇都宮生まれの四七歳。業務用食材卸の役員として勤務後、宅配ピザブームを契機に独立。昭和61年、「ミラノピザ」チェーンを起業する。宅配ピザの供給過多を感じて、一昨年、新規事業のたこ焼きFF「宮たこ」のチェーン展開に乗り出す。趣味は月一回のゴルフでハンデは二〇。酒はほどほど、たばこは吸わない。

◆(株)ビック/代表取締役=細谷俊夫/設立=昭和61年3月/資本金=一〇〇〇万円/年商=六億円/社員数=三〇人/本部所在地=栃木県宇都宮市宮原四-二-五、電話028・637・7208/事業内容=宅配ピザ「ミラノピザ」(二八店舗)、たこ焼きFF「宮たこ」(四店舗)チェーンのFC展開、食品流通事業など

◆宮たこ/創業=平成8年10月/店舗数=四店舗(直営一、FC三)/モデル店と店舗所在地=宇都宮オリオン通り店、栃木県宇都宮市曲師町三-八オリオンビル一階、電話028・639・6577/初期投資=一〇〇〇万円/立地、坪数席数、業態=ビルイン、四・五坪(厨房のみ)、テークアウト/営業時間=午前11時~午後9時、無休/客単価=五五〇円/一日来店客数=八〇~一五〇人/年商=二五〇〇万円/月商=二〇〇万円強/客層=男女比は三対七、女子学生多数/原価率=三二%/従業員数=社員一人(常時一人)

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