1級料飲サービス士探訪 京王プラザホテルスーパーバイザー・荒瀬 一春さん
受験資格は経験年数によりますので、三級、二級、一級と取得してきました。料飲サービスの知識の整理集大成がしたいと思い認定を受けました。
サービスはハートとホスピタリティーから始まりますが、自分勝手をやることではなく、基本を守ってそれを応用することです。新宿のお客さま、スポーツクラブのお客さま、インドネシアのお客さまはそれぞれ違います。一〇〇人のお客さまには一〇〇のサービスが提供されなければなりません。主賓はお客さまです。
三六歳で一級を取得して初めて、サービス技術を完成できたというより、ここでようやく自分の味を出せる段階に到達したと感じます。言い換えれば、資格取得以前には仕事によってサービスが自己流に偏っていたことが分かりました。現在サービスの偏重が払拭された感じです。
どんなお客さまにもサービスをあいまいにしてはならないという責任感を持つようになりました。基本を中心にして自分からお客さまの期待以上のサービスをしていきたいと思います。
トレーを持っていた者が全く異なる仕事の、経営企画、机上の理論、数字を扱う仕事をしました(三四歳の時)。新規事業の計画に携わり、土地の物件から始まり、単価をいくらにし、何回転すれば収益があがるのかなどのシミュレーションをしました。
現場で長く働いていますと、新宿の昼のランチタイムではどのくらいの単価が限界で、どのくらいの利益が見込めるか、体で知っています。新規の計画立案に、金利、人件費、償却費をはじいてゆくと、実際に近い計画ができます。
現場の経験を持った者が経営企画で学んだものを持っていると、これは大きな強みを発揮します。その筋の業者が自分たちに都合のいい数字を立てて提案してくる場合もありましたが、これに目がくらむようなことは、避けることができました。
商売の収支がはじけ、係数が分かるサービスマンの適応範囲が広がってきました。一般に数字を設定して五官を絞るのですが、五官から入って数字をはじき出せるサービスマンのいるホテルが、本当に力のあるホテルだと考えています。
経営企画、総務、経理、人事、いずれもどこの会社にもある部門です。ある程度の時間があれば理解できます。数字の勉強をさせてもらったので、現場に帰りたいと希望しました。私は接客業、料飲に興味を持ってホテルに入社したのですから、現場に戻りました。
会社にはいろいろな体質があります。経営の切り口は違います。しかし、お客さまにとっては、どのホテルも同じです。会社よりもお客さまの求めるものすべてに関心を持っていきたいと思います。ただ皿を下げ、水を注ぐのではなく、どこのホテルにいっても恥ずかしくないサービスができる人間になりたい。
私たちは会社で資格を前面に出せ、資格バッジを胸に着けろと指導されています。フランスのレストランは☆の数で料理のグレードがお客に分かるようになっていますが、それと同じように、一級のサービス技能士がサービスをするホテル・レストランとサービスのグレードを表示し、お客さまがそれを見てお店を選ぶ、そのような未来があればと思います。
二八歳の時、インドネシアのホテル日本食堂に出向しましたが、語学の壁、カルチャーショックでこれといったものを残すこともなく帰国しました。
現在、語学、和食、洋食、ワイン、日本酒とあらゆるものを勉強し、グローバルに通じるサービスマンになりたい。そして、他の企業から求められれば指導員として出向く、それが私の将来の希望です。
また、そのような資格を公が認めるといった制度ができるならサービスを志す者として、進んでチャレンジしたいと思っています。
(聞き手・野崎正)
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[参考]資格認定機関=社団法人日本ホテル・レストランサービス技能協会(東京都中央区銀座八-一二-六、小野商ビル2F、電話03・3545・5481)
プロフィル
あらせ・かずはる=昭和62年(株)京王プラザホテル入社。平成元年料飲サービス士三級取得。インドネシア・インタコンチネンタルホテル和食堂に出向。ナンバーワンスポーツクラブへ出向。6年料飲サービス士二級取得。7年ソムリエ資格取得、本社経営企画課勤務。9年料飲サービス士一級取得。現在、京王プラザホテル・グリルメダリオン・スーパーバイザー。