企画特集「ラーメン」:イメージ一新、広がる客層
飲食業を見てみると、喫茶店などの生業店の数は年々減少しているが、その中で中華の数が増加しているのが目立つ。町で目に付くのはラーメン店の増加だ。グルメ雑誌やテレビの番組などでもラーメン店を取り上げる例が多いし、ラーメン博士などがいたり、ラーメン博物館などができて大繁盛だ。
例えば、飲食店の評価をする場合、フランス料理だと皆さんがおいしい店の論争をする際に、そこに山本益広や見田盛雄などのフランス料理評論の大家が居たら思わず黙ってしまうはずだ。しかし、ラーメンとなると参加者の全員がフランス料理の大家にも負けない一家言を持っているはずだ。
ラーメンのおいしいまずいには正解がない。全員が正しい。ラーメンは正確にいうと郷土食であるからだ。札幌ラーメンと、博多ラーメンを比較してどちらがおいしいかといっても全然違うジャンルのラーメンであり、中華とフランス料理とどちらがおいしいのかといっているようなもので比較することができない。
全員が正しい、全員が参加できる。毎日食べても飽きないし、懐も痛まない。これが景気の悪い昨今、ラーメン店が元気の良い最大の理由だろう。
ただし、どの店舗でも繁盛しているわけではない。今の消費者は情報の入手にたけており、口コミ、雑誌、テレビなどをよく見ておいしいと評判の店を開拓している。そのためには新聞、雑誌、テレビなどで取り上げられる話題作りが重要であり、お店の特徴がなくてはならない。
喜多方ラーメンなどその典型的な例で、町おこしの一環で醤油や味噌などの醸造用の倉が多かったことを利用して売り出したわけだ。そのイメージを利用し、外観を倉のイメージにしてチェーン展開をするようにもなっている。
いかにストーリーを作るか、話題性を作るかということがまず重要だ。客が食べてくれないことには始まらないからだ。
成功するラーメン店の条件を考えてみよう。
大阪はどちらかというと「こてこて味」のラーメンに人気があり、その代表は難波の金龍ラーメンだ。屋台のような汚い店だ。
飲食店を選ぶ基準は東京はCSQで、大阪の場合には、QSCの順だ。大阪のQとはクオンティティー(量)、Sとはスピード、Cとはコストだと冗談でいわれるくらい基準が異なる。大阪ではカンテラ(七輪)の炭火で焼く焼き肉が伝統的に人気がある。しかし東京では消防法の規制の問題もあるが、炭火の焼き肉は人気がない。
焼き肉はダクトが内蔵された煙の出ない焼き台でないと人気がない。東京の女性はヘヤースタイルに気を使っているので、髪の毛ににおいがつくことを嫌がる。そのため、煙の出る焼き肉は人気がない。
中華料理チェーン餃子のOチェーンは、関西では大理石などを使用した立派な店づくりと、低価格で大成功しているが、東京では成功していない。店内のクレンリネスが十分でなく女性の評価が低いためだ。
大阪のラーメン屋は汚いのが通り相場だと思っていたら、難波の金龍のそばに異様な外見の店で行列を作っていた。真っ白な外観にオレンジの柱で、まるで洋食のような目立った外見だった。
何だろうと行列をかき分けてのぞいてみたら、真っ白な汚れのないコック服を着たコックがラーメンを作っている。何で並んでいるんだろうと思わず入って食べてみたら、何と醤油ラーメンではないか。東京の醤油ラーメンよりさっぱりした味の白菜を入れたラーメンだ。
大阪は金龍ラーメンに代表されるこてこて味で東京風の醤油ラーメンはだめだと思っていた筆者は驚いてしまった。そして、店内を見てみると、カウンター内部も整理整頓された、ラーメン屋とは思えないきれいな店舗だった。
客層を見てみるとヨーロッパ通りのせいか若いカップルが目立った。店名は神座という。現在では五店舗で年商二五億円を達成しているという超繁盛店だ。大阪でもクレンリネスは重要な繁盛店の条件になってきたようだ。
東京でも同じ傾向があり、銀座や護国寺などに店舗を構える大島ラーメンの外観も目立つものであり、筆者も思わず入ってしまったくらいだ。やはり飲食店は客になんだろうと感じさせるような目立つ外観で、思わず店舗に引き入れるという気迫が必要だ。