で・き・る現場監督:中国料理「北京飯店」支配人・木野恭孝さん

1998.07.20 156号 11面

北京飯店の木野支配人はこの道三〇年の大ベテラン。中華料理中心にいくつかの有名店でキャリアを積み、そのさい配能力を買われて昨年10月、年商三億六〇〇〇万円を売上げる店の支配人として迎えられた。

そこでまず感じたのは、各人が仕事にもっと「想像力」を加えてほしいという点だったそうだ。パートやアルバイトを含め三〇人を超えるホールスタッフの中には、当然支配人より店にいる年数の長い人もいる。仕事に慣れてくると「オーダーをとって、料理を運ぶだけ」に終わってしまいやすい。地元客が多くのんびりした土地柄であればなおさらのこと。

「でも、開店したら舞台で幕が上がったも同じ。お客さまをいかに喜ばせ、満足してもらうか、想像力をフルに働かせても、“これで最高”というものはないんです」

木野氏は「ホールのよさはスタッフが格好よく動いている姿を(お客さまに)見せるところにある」と説く。そのためにはテーブルのお客に常に気持ちを向け、前ばかりでなく後ろにも気を配る。お客が何を求めているかを察して行動する。それがホールでの流れるような動きになるという。もちろん身だしなみもお客さまへの気配りのひとつだ。

また宴会の場合、予約の時から細かく趣旨や希望を伺い、当日はそれに一番ふさわしいもてなし、サービスを提供する。例えば「接待」なら控えめかつ機敏に、「長寿の祝い」ならスタッフからの心からの祝辞とともにゆったり祝い膳を楽しんでもらう、といった具合に。

毎日開くミーティングでこうしたことを含め、スタッフに段取り、すすめ方を教えていくのも大事な仕事。性格は人それぞれで飲み込みの早い人ばかりではないので、適材適所で仕事を振り分けたり、時には(ベテランの)パートさんに対し「自分をおさえて相手をたてる」こともあるという。

どちらかというと気の短いタイプのため、忙しい時はつい「怒鳴ってしまう」こともある。ただ必ず後で「なぜしかったか」を説明して、納得させるフォローも忘れない。

こうした木野支配人のもと、前の職場からついてきている二〇代の若いスタッフもいて、現在ぐんぐん腕をあげているところという。

木野氏にこの道ひと筋できた魅力について聞いた。

「まずは日々いろいろなお客さまに会える面白さ。またセッティングひとつにしても自分のインスピレーションでどんどん変えていける。創造的な部分が多いのが魅力ですね」

今日も木野支配人の演出する、華麗なる舞台の幕が上がっていることだろう。

◆きの・やすたか(北京飯店支配人)=昭和16年福岡県生まれ。自衛隊、水商売を経て二七歳から中華料理店のホール職に。早い時期から定時の三〇分前出勤を自らの習慣としてきた。「今日一日無事に終わり、いい仕事ができた」という満足感は何ものにも代え難いとか。お酒は体質的に飲めず、ストレス発散法は休日の競馬、パチンコ。ただし、「今日使う金額はこれだけ」と決めたらそれ以上は自制する。遊び面でもディレクション(管理)能力は発揮されているようだ。

◆(株)北京飯店(神奈川県大和市中央二‐四‐一八、Tel0462・61・7160)昭和47年の創業。店舗面積二○○坪、全五○○席。レストラン、宴会、披露宴など各種パーティーに対応する本格中国料理の店。一日来店客数は三〇〇~四○○人で女性客が六割を占める。客単価は約四七○○円。従業員は社員四人、パート一〇~一一人、アルバイト二四~二五人。営業時間は午前11時~午後10時。年中無休。

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