ご当地ラーメン徹底研究 旭川ラーメン、独自の食感で大モテ

1998.08.03 157号 15面

旭川は北海道の中央部に位置し、昔から北海道の物流の拠点となっている。海とは無縁の地にありながら、海産物も豊富に流通している。人口、産業、すべての面で札幌に次ぐ北海道第二の都市である旭川は、ラーメンにおいても全国屈指の札幌ラーメンに負けるとも劣らぬ文化を持っている。

ラーメン店の数も多いし、ラーメンに対する意識も高い。その根源には、札幌とは全く違う生い立ちを、旭川ラーメンは持っていることがあげられる。

札幌のラーメン文化の元祖である「竹家食堂」が、旭川に「芳蘭」という支店の中華料理店を出したことや、札幌の「丸井今井」ではやった中華そばが、旭川の同店に店を出すなど、戦前は札幌の亜流的な位置づけであった。

それに対し戦後は、昭和22年から「蜂屋」「青菜」の二店が店を出し、札幌とは違った海産物をだしに使うラーメンを開発し、独自の食感を持った麺を導入した。戦前はいずれも横浜、東京から発信された麺文化であったのに対し、戦後はそれぞれ全く違った道を歩みはじめた。

全国的な大ブームを巻き起こした札幌ラーメンのキーワードは、味噌味と加水の高い黄色く太い麺。対する旭川ラーメンは、加水率の低い、色白の縮れ麺が特徴である。

水分が少ないから、スープを吸収し、縮れているからスープをよくからめる。麺とスープの一体感といったバランスでは、このうえない特徴を出している。

札幌ラーメンの麺のコシと歯ごたえとは違う。粉の香りと歯ぎれという新しいテクスチャーをなげかけた。

厳寒の地のため、脂を多く使い、スープの表面に浮かぶ脂が、湯気を立てずに熱を逃がさない役割をしている。スープも基本は醤油味で、具もシンプル。札幌のように野菜を乗せたりする店は少ない。

近年は旭川ラーメンも多様化し、味噌ラーメンも当たり前にメニューに入れるようになったが、あくまでスープと麺が主流のシンプルなラーメンは、野菜のうまみを生かした札幌流とは一線を画している。

ここ数年、この旭川ラーメンが、ラーメンの街の代表である札幌の地に出店して人気を呼んでいた。一九九七年には「旭川ラーメン村」もでき、旭川は市をあげてラーメンの振興に取り組んだ。首都圏にも本場旭川の味を出す店が数店名乗りを上げた。

私事で恐縮だが、新横浜ラーメン博物館の期間限定店でも、旭川ラーメンを紹介し、旭川ラーメンは一躍脚光を浴びた。

これまで、たれの味がキーワードとなっていた東京の醤油ラーメンに対して、スープの味で勝負する豚骨ラーメンが台頭した。昭和60年代から平成にかけて大豚骨ブームが巻き起こった。

旭川ラーメンが受けた理由は、醤油だれをベースにしながらスープ自体にも力強さを持っているところにある。海産物のうまみを生かしたところも、札幌や九州とは違ったアクセントとなった。

さて、この旭川ラーメンブーム、札幌ラーメンや九州ラーメンのように、今後もムーブメントを起こすのであろうか。味噌ラーメンや豚骨スープのように、醤油ラーメンとは別メニューとして取り入れられるものではないだけに、それほど大きく広がるとは考えづらい。

ご当地ラーメンも情報が出そろってきた感があり、今後はブランド名で勝負する時代ではなくなってきたと考えられる。ラーメンもいよいよ戦国時代に突入したという感覚である。

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