スパゲティ 「カピート」(日本製粉)ゆで時間50秒、冷凍麺で超スピード調理

1992.11.16 16号 13面

八九年9月に開設した日本製粉のパイロットショップで、「ノウハウ」を積み重ねてチェーン化する計画であったが、三年経過した現在においてもまだ“実験店舗”の段階に終っている。

しかし、それはともあれ、この店は“冷凍スパゲティ”を使っているところに大きな特色があり、業界の注目するところとなっている。

ゆで時間が僅か五〇秒以内。前記のあるでん亭やイタトリアントマトのボイリングタイムさえも寄せつけない記録的なゆで時間である。

冷凍といえば品質が落ちるというイメージがあるが、同店の麺はイタリアバリラ社のものを使っており、冷凍麺にしても品質は全く変りはないという(日本製粉外食事業室)。

メニューはトマトソース(六五〇円)、カルボナーラ(七五〇円)、ベーコントマト(八〇〇円)、サーモンクリーム(七五〇円)、ペストカーレ(八〇〇円)など一〇種であるが、冷凍麺はすべてポーションパック(一人前二五〇㌘)でストックしており、これを客からのオーダーを受け次第、専用の解凍釜でボイルするという調理システム。

具の盛の付けをおこなってテーブル出しまでは二分前後、トータルで三分間以内にフィニッシュできるという超スピードで、いわばスパゲティのファーストフード化を可能にしているシステムである。

冷凍システムは麺だけではない。ソースについても調理のシステム化、単純化を考えて、冷凍(パック)化しているのである。

つまり、先行きのチェーン化に対応して、アルバイトのキッチンマンでも調理が簡単にできるという店舗運営の考え方なのである。

このパイロットショップは、新宿の紀伊国屋書店の地下一階に位置しているが、場所柄人の通行量は激しい。

店舗面積約九坪。カウンター(一二席)だけの小さな店であるが、合理化された調理システムによって高回転を可能にしているので、平日で一三~一五回転、土日祭日で一六回転以上と、好調な運営をみせている。

店の損益分岐点は月商三〇〇万円。平均客単価は八〇〇円であるので、単純計算すれば、平日で日商一二万円、累計すると月商三六〇万円を突破しているので、損益分岐点を十分にクリアしているということになる。

しかし、この調理システムからすると、回転率は二〇回転(日商二〇万円弱)が理想としており、この範囲に達するためにはまだまだ集客力を高めていく必要があるとしている。

店舗のオペレーションは、正社員一名、アルバイト一名の計二名でよく、この点では人件コストは大幅に低減できており、同店の収益力は高いといえる。

しかし、多店舗化、チェーン化については、先行きはともかくとして、ここ当面の計画はないとしている。

「やはり、こういった消費が低迷する時代ですから、新たに出店していくのはタイミングが悪いということです。むしろ、既存店でも営業不振というケースが増えてきているわけですから、ここしばらくは静観するというのが正解じゃないでしょうか」(日本製粉外食事業室)。

スパゲティのファーストフード化、調理のシステム化の実現という強力な武器を開発しながら、バブル経済破綻のあおりを受けて、将来を展望するチェーン計画も現在のところ凍結状態ということのようである。

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