麺・ご当地ラーメン徹底研究 豚骨スープに極細麺の博多ラーメン

1998.11.02 165号 8面

豚骨を強火でたき出し、白く濁らせたスープに、加水率の少ないストレートの極細が泳ぐ。具はチャーシューに白ごまと紅ショウガ。ネギは緑色で細い博多万能ネギ。最近では辛子高菜を置く店も多い。

チャーシュー以外は薬味といった感じで、いたってシンプルである。麺は一〇〇gぐらいで、ボリュームは少なめだが、麺を先に食べてスープを残し、そこにまた麺をお代わりする「替え玉」というシステムがあるのも博多流。

豚骨を強火で長時間たくため、骨の髄からゼラチンなどが溶け出し、乳化して白濁する。このためスープは脂分も多く濃厚。脂っこさと豚のにおいを紅ショウガがさりげなく緩和する。

極細の麺は水分が少ないため、スープを吸収しやすいが、ストレートなため、あまりスープを絡ませない。濃厚なスープに縮れ麺を使うと、スープが絡まりすぎて、しつこさが際立ってしまう。濃厚なスープとストレート麺は、博多流のバランスをとっている。

福岡市に戦前からあった屋台の「三馬路」、昭和21年に店を構えた「博多荘」、老舗のこの両店のスープは中国風の澄んだものであった。やはり戦後間もなく博多で(-)という、うどんの屋台を引いていた津田茂さんは、兵隊として中国に渡っていた時、奉天(現在の瀋陽)で食べた中華麺を売ろうと考えた。

その時食べた白濁した豚骨スープは、アイヌ料理のソップであると聞いていた。このソップの味が忘れられなかった津田さんは研究を重ね、現在の豚骨スープを創り出した。これが博多中に広がり、博多ラーメンというご当地ラーメンとなる。

一方、魚河岸の長浜で昭和28年に榊原松雄氏が開業した「元祖長浜屋」は、名古屋で台湾人から教わった台湾料理をルーツとする。時間が勝負の魚河岸の人たちは気が短い。そのため、麺は次第に細くなった。細い麺はゆでのびが早いため、大盛りとは別に替え玉という麺をお代わりするシステムができたという。

今では博多でも替え玉システムは取り入れられ、スープも臭みを少なくする工夫が加えられるなどして、博多ラーメンと長浜ラーメンの違いは、あまりなくなってきた。

昭和60年代から平成にかけて、博多ラーメンを中心とした一大豚骨ラーメンブームが首都圏に押し寄せた。五〇代よりも上の年齢層は、どうしても白濁した臭みのあるスープを嫌う傾向は強い。

しかし、若い人たちは皆、ボリューム感のある豚骨ラーメンを好んで食べる。肉類や乳製品の摂取量の増加と、豚骨ラーメンの躍進が、足並みをそろえる傾向にあり、インパクトの強い味が若者に受けたと考えられる。

いま真っ盛り

東京で生まれた「ホープ軒系」の背脂をスープの上にふりかけたラーメン、横浜で生まれた豚骨醤油の「家系」ラーメン、そして、博多、熊本、鹿児島などのご当地豚骨ラーメンが束になり、インパクトの強い豚骨スープのラーメンは一大ムーブメントを巻き起こした。

昭和40年代に起きた札幌味噌ラーメン以来の大ヒットとなった。情報化も進み、ご当地ラーメンも出そろってきた感があり、これ以上のムーブメントを起こせるラーメンは、現れないかもしれない。

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