で・き・る現場監督:かつ波奈市原店・大山元章店長
「若々しく活気にあふれ、お客さまに喜ばれる地域一番店を目指し、食を通じて社会に貢献し社会に奉仕できる人づくりをする。感動なる人生の基盤をつくること」
これは、早野商事(株)の経営理念である。大山さんは、この経営理念が自分の考える店づくりに合っていたため、平成8年に入社。調理場、フロントを経験し、入社二年目の昨年、かつ波奈市原店のオープンと同時に店長となり、一億九二〇〇万円の年商をあげた、かなりのやり手だ。
大山さんのモットーは、「本気で話し、接する」こと。客に対しても、スタッフに対してもいつも本気で接している。本気で言っていないマニュアル通りの接客用語では、客には伝わらない。大山さんは、そういった単なるサービスの提供を嫌う。
例えば「ありがとうございました」を、「どうでしたか」「おいしかったですか」などの意味を込め、問いかけるように言う。
「そうすると、自然と笑顔が出てくるものなんですよ。作り物じゃなくてね」
それが客とのコミュニケーションの一つと考える。
もちろん、スタッフにも経営理念をただ暗記させることはしない。例えば、「若々しい」とは、イキイキしている、行動がスピーディー、笑顔が爽やか、客に対する反応が素早いなど、その言葉の意味を理解させる。どういう店なのか、どう働くかなどをまずスタッフに知ってもらうのが大山さんのやり方だ。
スタッフ一人ひとりの個性を大事にしていきたいという大山さん。採用時の面接では必ず「自分の嫌いな部分は?」という質問をする。そして「ここでそれを直していきましょう」と一緒に目標を設定しているのも、その考えからだ。
「新人には、まずはできる人の物まねをしなさい、と言っています。そこから一つ一つの動作の意味を気づいて、自分で理解し、覚えることができるんです。そして慣れてくると、自分のカラーを出せるようになりますね」
その人なりの「ありがとう」への意味の込め方、その人にしかできない接客などが必ずある。ルールがある中で、客に喜んでもらえるための自分のカラーを出すのだ。
「制服についている名札は『芸名』だと思うんです。だから店はお客さまを楽しませ、喜ばせるステージなんです」
オープンキッチンなので、ホールだけではなく、キッチンのスタッフも客の反応が直接わかる。そんなスタッフにとって、客を喜ばせることがうれしいと思うような環境づくりが、店長である大山さんの役目。
大山さんの実践するコスト削減法は、売り上げ予測を確実にすること。その予測をもとに発注、仕入れ、シフト作成などをする。
「でも、数字はあまり意識しないんです。ただ数字だけを追って、やみくもに人員を削減しても、『明日を想定した運営』にはなりません。お客さまに迷惑をかけることにもなります」
それよりも、「まわる人数」を考えることが大切と言う。まわる人数とは、つまり今必要な人数ということ。そしていかに効率よく配置するかである。
「手が空いてしまう時間が出てくるのはなぜなのか? と考えるんです。個人の能力がアップし、仕事の効率が上がったためならば、その余分な人数を減らす。絶対に無理に削ることはしません」
もちろん、個人のレベルをあげるための指導も怠らない。
プライドの持てる仕事をしていきたいというのが大山さんの抱負。
「飲食店、特にホールサービスは軽く見られがちじゃないですか。でも、みんなに『この仕事をやってみたいな』と思わせるような店舗展開をしたいですね」
何事にも本気で取り組む店長の姿を見せることが、何よりもスタッフの意識を高めることにつながっているのだろう。
◆おおやま・もとあき(かつ波奈市原店店長)=昭和46年千葉県出身の二六歳。平成8年に早野商事に入社。現在は、かつ波奈事業部第一課長として、北習志野店、君津店のスーパーバイザーや、イベントの企画、商品開発などを行っている。「とにかく食べることが好き」というだけあり、休日に食べ歩きをすることが息抜きという。勤務時間は午前11時~午後11時。
◆早野商事(株)(千葉県千葉市若葉区小倉町一七五一‐三〇、Tel043・232・0144)昭和53年設立。とんかつの「かつ波奈」をはじめ、とり料理の「とり屋一億」、和食の「波奈」など多彩な外食店経営を、千葉県を中心とした関東エリアで展開。従業員七〇〇人(社員九〇人)。年商五四億円。8月に中華がメーンのアジアンフーズの居酒屋「アジアンキッチン」がオープン予定。
◆かつ波奈市原店(千葉県市原市白金町五‐九‐一、Tel0436・24・1087)店舗面積約七〇坪、八八席。昼は会社員や付近の工場の従業員、夜はファミリーやカップルが中心。駐車場台数四〇台。従業員は社員三人、パート、アルバイト四〇人。