まかない味シュラン(22)スペイン料理「スペイン亭」

1999.01.04 169号 6面

日本において、数少ないスペイン本場の味が堪能できる「すぺいん亭」。シェフ村田さんはスペインの大会でも優勝を重ねる腕前の持ち主。

JR川越駅から一キロメートル近く離れた所に位置するが、一〇〇席ある店内は連夜満席となる。家族のような結束をもつスタッフの客を温かく迎える対応は、とても新鮮に感じられる。

「足を運んでも食べたい」料理には地元に限らず、遠方からの客もやってくる。店の看板でもある大きなパエリア鍋が目印。各地のイベントへ出向いて、パエリアをふるまう出張サービスの人気も上々。

スペイン料理とは何を指しているのか。

「私のつくるスペイン料理はヨーロッパのおふくろの味というのが近いかな。風土に根づいたものをつくるよ。スペイン人の上流階級が食べる料理は、もうフランス料理に近いしね」

フランスでは、クリーム、バターをたっぷり使うが、かわってスペインではオリーブ、ニンニク、パプリカがメーン素材。スペインの中心部まで伝わっていかなかった地方の料理パエリアは、この三つをフルに使っている。この三つの素材を、新人のうちにいかに覚えるかがポイントとなる。

「オリーブオイルは煙が出るまで加熱します。向こうでは揚げ物もオリーブオイルでするくらいです。オリーブは油だけじゃなくて、実まで使うのも特徴です。新人にはオリーブやチョリソーなど、味覚学習としてよく食べさせます」

味覚学習が生かされるのは、材料の具や分量が変わったとき。どう対応していくかがプロへの一歩へつながっていく。

まなかいは、新人がローテーションを組んでつくる。シェフがそれぞれの腕をみて課題を与えている。

「オーブンの温度を肌で知ることが、新人の一番のテーマです。しかし、それを覚えるには反復練習しかありません。ですからオムレツは毎日のようにつくらせます。あとは自分はこれなら先輩にも負けない、というまで一品を徹底して、マンツーマンで覚えさせます」

マンツーマンで教えるのは、店の味を安定させる秘けつでもある。

「トリファ」

■作り方 オリーブオイルにニンニクを入れて炒める。むきエビ、玉ネギ、アサリ、ピーマン、サフランを入れて火を通す。パスタを5センチメートルくらいに砕きながら入れ、パスタに対して水2.5倍を入れてゆでる。塩で味つけ。

■ポイント ニンニク、サフランの使い方、タイミングを知ることができる。

「フィオリア」

■作り方 フランスパンを赤ワインに浸す。卵をからめて揚げるようにたっぷりの油で焼く。グラニュー糖をかけて食べる。

■ポイント 硬くなったフランスパンを使いきることができる。

「スペイノムレツ」

■作り方 ジャガ芋をゆでておく。玉ネギを炒めて、適当な大きさに切ったジャガ芋とともに卵でオムレツにする。ぶ厚くつくるのがスペイン風。

■ポイント 火の温度、フライパンの処理を知ることができる。

▼所在地=埼玉県川越市今成五三五‐一、Tel0492・41・3535▼創業=昭和59年▼営業時間=午後5時~午前0時、無休▼坪数・席数=六五坪・一〇〇席

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