中国料理3店舗の経営戦略 「東京大飯店」 一般レストラン・個室・大宴会場を完備

1992.12.07 17号 14面

新宿は靖国通りに面しており、東隣りに花園神社が位置している。昭和35年4月のオープンというから、今年で満32年になる。現在は地下三階(駐車場)、地上九階建ての大型ビルだが、当初は三階建ての小さなビルであった。

昭和49年にリニューアルして、今の規模になったのであるが、宴会、パーティー需要を見越しての施設増強で、床面積も三倍以上にスケールアップしている。

施設は地下一階から三階までが駐車場(八〇台収容)で、地上一階はフロント・ロビー、二階が事務所、三階レストラン、四階から七階までが個室(五〇室)、八階が一〇〇〇人収容の大宴会場になっており、小は二人から大は一〇〇人単位からと、多様な利用形態に対応できるフロア構成となっている。七階には結婚式場もあり、年間当たり四〇〇組の利用がある。

三階のレストランはフリー客が対象で、一〇人単位の円形テーブルが二八卓、計二八〇人を収容できる大規模レストランとなっている。

もちろん、レストランといっても中国料理の業態で、昼はランチ、夜はディナーメニューの提供と、この店の中心的機能を果している。

ランチメニューは八五〇円からで、客単価は一〇〇〇円どまり。夜は同四〇〇〇円。客層は昼はサラリーマンやOLなど地域の会社勤めの人、夜は友人、知人、ファミリー客などの個人客をはじめ、企業や官公庁関係の会食、接待客などで、利用人数や消費金額に対応して多様な飲食ニーズを満たしている。

料理内容は広東、上海、四川、北京料理ありと、日本人好みのするスタンダードメニューならすべて網羅しており、とくに料理形態にはこだわっていない。

これらレストランメニューは、前菜類からメインディッシュ、デザートまで約一五〇種類をラインアップしており、中国料理を食べ慣れた食通家に対しても、それなりに対応することができる。

「創業三〇年以上ですから、新宿では広く知られた存在ですし、中国料理については地域一番店と自負しておりますし、駐車場も完備しており、お客様も都内全域からお越しになります」(東京大飯店経理次長花井久知氏)。

レストランメニュー一五〇種は、全店のグランドメニューということにもなるが、もちろん、旬の材料を使った季節折り折りのメニューも必要に応じて加えている。

グランドメニュー一五〇種に加えては、宴会・コースメニューもラインアップしている。このメニューは基本的にはグランドメニューからチョイスして、料金別に“セットメニュー”にしたものであるが、一部においては季節メニューも取り入れており、バラエティに富んでいる。

宴会・コースメニューは、毎年のこととして11月20日から新年の2月まで忘年会、新年会シーズンのメニューを導入しているのであるが、今年も六〇〇〇円、七〇〇〇円、八〇〇〇円、一万円と料金別に四コースをラインアップ、宴会シーズンメニューとしてアピールしていく。

料理内容はたとえば、六〇〇〇円コース(一人前)は、前菜盛合せ、季節野菜と二種炒め、芝海老チリソース煮込、揚物盛合せ、野菜クリーム煮、五目やきそば、野菜入五目スープ、アーモンドゼリーなど。最高額の一万円コース(同)は、特別冷菜飾盛合せ、生貝炒めブロッコリー飾り、伊勢海老チリソース煮込、かにみそ入フカのヒレ煮込、北京ダック菊花飾り、牛肉煮物レタス添え、鯛の丸揚甘酢ソースかけ、特製じゅんさい入スープ、中国銘菓二種盛合せ、季節果物メロン入デザートなどといった単品メニューの構成で、それぞれにボリュームがあり、リッチな内容となっている。

これら料金は税・サービス別であるが、料金はよりゴージャスにという向きには二、三万円のコース料理も設定でき、客の要望に応じていかようにも対応するという考え方をとっている。

「中国料理はいろんな材料が使えますし、またその組み合わせによって多様なメニューを作り出すことができるのです。ですから、材料を上手に使いこなせる料理人の確保は最大のポイントになり、この点が店の成否を決める要素にもなっているのです」(花井次長)。

東京大飯店の料理人は、香港から招へいしているプロを中心に四五人で構成している。

技術は本場仕込みであるが、味づくりは日本人の味覚、好みに合わせている。

一方、食材については、ナマ物については自社の仕入れ部門を通じて毎日仕入れているが、海産物や乾燥物の食材については香港から輸入しており、質的な面においては本場に近づける努力をおこなっている。

質的な面はあくまでも本場の内容に沿ったものであるが、しかし、食材コストは二七~二八%以下におさえる工夫をおこなっている。

ストックできるのはまとめ買い、また相場の安いものを量的に買い入れておくといった工夫で、食材に大量に消費する大規模店の強味を発揮している。

年間売上げ二〇億円(九一年度実績)。バブルがハジけて企業の接待利用の減少などで、売上げ的には伸び悩むという状況になってきているが、これからの課題としては、少人数への対応、また店づくりについても若年層や女性層が利用しやすいように、いかにもチャイニーズという雰囲気ではなく、和洋のシックで明るいムードのインテリア志向も大事な要素としており、この面での工夫も強めていくとしている。

このほか、営業を抜本的に活性化していくためにも、明年4月ごろを契機に施設レイアウトのリニューアルをおこない、客の来店動機を強く喚起していく考えも計画している。

これは現在の総花的な料理の売り方を改めて、フロアごとに北京、上海、広東、四川料理というように料理テーマを明確に打ち出していくという考えのもので、客がより中国料理を理解し、チョイスしやすいという意図を秘めている。

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