で・き・る現場監督:ニューヨークキッチン渋谷店リーダー・森山理恵さん
「この店で働きたい」と希望する若い女性が後を絶たないそうだ。渋谷公園通りから一本奥まり、抜群のロケーションとはいえない。バイト募集を張り出しているわけでもない。「『お店の雰囲気が好き。楽しく働けそう』といって来る方がほとんどなんです」とほほ笑むのはフロア責任者の森山理恵さん。
ニューヨークスタイルの軽食とお茶が楽しめる店として開店一年半。ベーグルや菓子を含めすべて手作りという本格志向も受け、若者に大ブレーク中だ。
森山さんが面接をした人は正規の募集期間も含め何百人にも上る。実際のフロアスタッフは一二人。うちバイトは一〇人で、定着率もいいことから、ほとんどが「お断り」することに。
店で働いているのは「やる気と働く目的がちゃんとあるか、また自分の考えをきちんと言えるかどうかで採用を決めた」よりすぐりのメンバーばかりだ。
スタッフ平均年齢は二二歳(うち男性は一人)。人間関係のトラブルもなく、トイレ掃除など裏方仕事も進んで行うムードができている。
もっともこうなるには「仕事をただ振り分けて命令するだけではバイトさんはなかなか動かないもの。まず社員の自分が率先して動き、その姿を見せていく」という実践があった。
若いだけに時間にルーズになりがちな人もいるが「遅刻などはきっちりしかります。繰り返すようなら『もう一回遅刻したら減俸(あるいは退職)』とペナルティー宣告を」しながら仕事の厳しさを教えていく。
店の「顔」であるフロアをほぼスタートのときからまかされ、つり銭の出し方など細かな手順まですべて組み立てていった森山さんは、もともと外食業界出身ではない。短大卒業後、保険会社OLとして勤務の後、一昨年から大学(通信大学の三年)に編入、同時に興味のあった外食の世界に飛び込むという経歴の持ち主だ。
「人とたずさわっていく仕事が好きです。マネジメントを学んでいきたいと思っていますが、勉強になるのはやはり現場での体験ですね」と話す。
現在、当初からのバイトさんがアルバイトリーダーに昇格、まとめ役として頑張ってくれている。森山さんにとっては少し余裕の出てきた時期。この後は「ファストフード店の機能的な動きを取り入れつつも、機械的ではない人間らしい温かい接客を目指す」マニュアルを作成中だ。また「お客さまに飽きのこない新しいメニューもどんどん提供していきたい」と意欲を燃やしている。
◆もりやま・りえ(ニューヨークキッチン渋谷店リーダー)=昭和45年神奈川県生まれ。自宅から片道小一時間かけて通勤。週二日の休みは勉学と食べ歩きに忙しいが、「ストレスをまったく感じない」ほど充実の日々。外食専門誌などもよく目を通し、とくに店を経営する店主や料理人の半生記、苦労談に引かれるという。
◆(株)セガ・フードワークス/代表取締役社長=後藤仁史/創業=一九九八年/所在地=東京都渋谷区神南一‐一二‐一六、Tel03・3464・2497/レストラン六店舗を展開(うち二店が昨年から経営母体となったニューヨークキッチン)/社員数一三〇人
◆ニューヨークキッチン渋谷店(東京都渋谷区神南一‐一七‐五、Tel03・5457・7755)営業時間=午前11時~午後11時、年中無休/店舗面積・席数=約七〇平方メートル・九四席/従業員数=正社員八人、アルバイト一四人/一日来客数=約七〇〇人/客単価=七~八〇〇円