お店招待席 焼鳥・釜めし「鳥へい」(経堂) 懐石料理の出張も
木造二階建て。一階一〇席(カウンター)、二階三〇名(座敷)収容の小さな店。手づくりのメニューブックに、焼鳥・釜めし・うなぎ・懐石出張料理とある。もちろんアルコールも、ビールからウイスキー、日本酒、焼酎、ワインとフルアイテムを揃えている。食事客からアルコール客まで、飲んでよし、食べてよしの店といった趣である。現にそういった利用のされ方をしており、地域のカフェレストランといった役割。しかし、店の売りものは屋号のとおり、焼鳥、釜めしがメインで、店主の長谷川一平さん(46歳)も、それを強く意識している。
長谷川さんは銀座鳥ぎんで修業を積んで、八年前に独立開業した。焼鳥と釜めしについては、鳥ぎん仕込みという自負がある。
焼鳥は全部で五〇種ほどをラインアップしている。よく出るのはレバー(一〇〇円)、手羽先(二〇〇円)、骨肉から作る自家製のつくね(一〇〇円)などで、この三種で一日二〇〇本は売れる。
焼鳥の調理はセラミックの焼台でおこなう。火(熱)のコントロールがしやすいし、炎が出ないのでまんべんなく焼ける。
鳥ぎんの修業時代は備長炭で焼いていたが、炭で焼く場合はまとまった本数が出ないと効率が悪いし、炭のロスが出てしまう。しかも炭火の場合は火力を一定に保つことが難しい。
その点、セラミックの焼台はスイッチオンで、火力が一定率であるので、火種から火を大きくして火力を安定させるという煩わしさがない。しかもコストも電気代だけで済むので、安く上がる。
《朝5時の築地通り》 焼鳥の材料は専門の業者から仕入れている。肉質がよく新鮮なもので、一日に二回の配送を受ける。今日仕入れたものは今日売り切る。材料がフレッシュなうちに消費するという考え方であるが、このためには見込み生産のカンが要求される。
「材料は日持ちのいいもの、悪いものとあるわけですが、その状態、タイミングをみての使い方が大切なことなんです。なんでもかんでも新鮮なものでなくてはならないということもないわけです。要は売り残し、不用なストックはしないということです」(長谷川さん)。
材料はメニューによっては、フレッシュな素材、でなくてはならないものもあるし、冷凍であってもいいものもある。どういう調理をし、どういうメニューを作るのか、これによって材料の選択が決まる。
鳥へいでは刺身類も扱っているので、これら魚介類の材料は、長谷川さん自らが築地の魚市場に行って仕入れてくる。週二回、朝五時起きして出かける。カニ、イカ、ホタテ、カキ、ウナギなど材料を吟味して仕入れてくる。
これら材料は釜めしの具として使うものもある。ホタテの貝柱、カニ、カキなど。単純な料理は素材のよしあしが表に出る。釜めしは材料の風味も大きなポイントだという。このメニューには、とり、たけのこ、鮭など山・海の材料で三〇種を揃えている。値段は六八〇円から一〇〇〇円まで。全品にみそ汁とおしんこが付く。よく出るメニューはとり(六八〇円)、五目(七五〇円)、カキ(九〇〇円)など。
調理は五台のガス台でおこなう。時間は一五分。客の中には待つ間、ビールやワインで、ツマミに焼鳥というケースもある。
冬場はナベ料理。石狩(九五〇円)、カキ(九五〇円)、寄せなべ(九八〇円)。石狩ナべはサケかす汁で、こってりとしてうまい。
ナべには日本酒がフィットする。一の蔵、浦霞などはよく出る。
ワインもある。これは珍しく小bMの生詰めワイン(三六〇㍉㍑一〇五〇円)。ナイアガラ、デラウェアの二種類があるが、店に入荷しているのはデラウェアのみ。ナイアガラはさらに評判のもので、手に入りにくいのだという(長谷川さん)。
・住 所/東京都世田谷区経堂三‐二‐一〇
・電 話/03・3439・3822
・営業時間/昼11~14時
夜7時~23時(月曜日休み)
(しま・こうたつ)