名古屋版・繁盛店ルポ:ソーアン、本格料理とゆとりの空間

1999.06.21 180号 13面

去年から情報誌やTVを賑わせているのが、開店一年目の「S〓ho」(ソーホー)と、半年目の「S〓An」(ソーアン)。経営者は二店とも同じで、予約しないと入れないほどの繁盛ぶりだ。さっそく、「錦三」を少しはずれる問屋街にS〓Anを訪ねることにした。

四階建てのこの店は、各フロアごとに雰囲気をガラリと変え、目的や懐具合やいっしょに行く人によって選ぶことができる。一階はカウンター七席だけのすしコーナー、二階は飛騨の民家風の総板張りの掘りごたつ席。カウンターには京都のおばんさいやおでんが並ぶ。いろり端の席では実際に焼きながら食べられる。

また三階は、「茶の湯」の心をテーマに独立した茶室づくり、四階はふすま絵が美しい武家屋敷を思わせる宴会スペース。各階に入る扉はそれぞれのイメージを表現した凝りに凝った芸術作品のようだ。

臼井景社長に聞くと「僕らの年代のサラリーマンが五、六人で連なってゆきたい場所がない。それで等身大の自分がゆきたい店をつくった」。総合建設(株)トーアの関沢社長との偶然の出会いから話はとんとん拍子に運び、漠然としたイメージがカタチになった。

確かに、今話題になるのは若い世代向けの居酒屋ばかり。料理はおしゃれな洋メニュー中心で、胃が疲れ気味のオジサンには重すぎる。雰囲気も少々にぎやかすぎるし、というわけであくまでも料理も店づくりも和がベース。

最初につくったSohoは「遊び心がふんだん」(臼井社長)で、各所で「ワァすてき」と思わず感嘆の声を上げるほどの驚きの空間。看板もなく「いわば記号のような店」(臼井社長)だそうだ。

一方、S〓Anは「草庵」が土台になっているだけに茶室のフロアからイメージをふくらませた。時間も空間も「ゆとり」がテーマだ。Sohoでは名前の前に居酒屋をつけたが、S〓Anは居酒屋の固定観念から遠ざけるためにあえてはずした。

舌が肥えた客が満足できることを基準にした料理も本物をめざす。新鮮な魚をどこよりも値打ちにと、柳橋には社長自ら一週間に二、三度は通っていい素材を探し出す。

「同じマグロの刺身を食べても職人や仕入れの努力で他の店とは絶対違うものを出したい」

ヒットメニューはサンドイッチの天ぷら(七〇〇円)にギョーザの刺身(七〇〇円)。料理が和でなくても、ネーミングの中に和を見せるようにしている。ギョーザの刺身は、ユッケを生ライスペーパーで包む料理で限られるためすぐなくなり、まぼろしのメニューとなり、人気はうなぎ上りとか。

「予約しないと入れない店になったが、会社帰りにちょっと寄りたい気軽な店が次のテーマ」だそうだ。

◆「S〓An」(ソーアン=名古屋市中区丸の内二‐一〇‐二、Tel052・223・0706)営業時間午後5時~午前0時、客席数一五〇席、客単価三八〇〇円

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら