まかない味シュラン:四川料理「麻布十番中華楼」
昨年3月にリニューアル。それまで、いまひとつ売上げは上がらなかった。厨房・ホールスタッフを一新し、厳しい状況のスタートだったが、徐々にリピーターは増えているという。
サラリーマンをターゲットに、ランチ八〇〇円、一〇〇〇円、と麻布にありながら価格はリーズナブル。週に二回くらい通ってもらえる値段を設定した。土・日の昼は飲茶コース(一五〇〇円~)を取り入れるなど、若者が多い街だけに流行にも敏感だ。
「少しずつですが、客足も伸びています」と、料理長の鈴木さん。「安い、うまい以外はやらない」と徹底した味のこだわりで挑んでいる。
厨房には五人のスタッフ。まかないは暇な時ほど新人が担当するが、そのほかは手のあいた者がする。
テーマは与えず、自分のやりたいものをつくらせるというが、ほとんどは毎食中華のおかず。
「もうみんな、いやなくらい中華やってますよ。それでも、ここは中華料理の店であって、新人にとってはまかないが勝負の場なんですよね。ここで覚えなかったら新人は覚える場所がないですからね。ですから、私も食べて必ず、ひと言感想を言います。まかないは味はもちろん、ごちそうさまと言われる喜びを知ることの方が重要なんです」
「新人には、まず自分で全部見せて、目で覚えさせる。それからデザートから一つずつ徹底して教える」
これは、自分はこの料理では負けない、というものを一つずつでも増やしていくことが、料理への自信につながるとの考えから。
自分のつくったもので、客にごちそうさまと言われる喜びや、おいしかったと言われる感動が、早く、多くなることによって、シェフへの情熱に結びつく。
お客に喜んでもらうためには、「最終的には気持ちを込めて、手を抜かないこと」と、鈴木シェフは言う。素材にお金をかけるには限界がある。いかに手間をかける努力ができるかに、それぞれのお客の「おいしい」がかかっている。
そのために、今日の客の希望する皿も、残った皿の原因も聞き出してくれる、ホールスタッフの接客は絶対。ホールの言うことは大事に忘れないよう、厨房にも徹底させ、店の士気を高めている。
チンジャオロース
■作り方 ピーマン、タケノコ、豚肉を細く切り、油通しする。砂糖、チューニャン(もち米を発酵させたもの)、コショウ、酒、醤油、酢、調味料で味つけ、片栗粉で仕上げる。
■ポイント 具を細く均一に切ること。
ホイコーロ
■作り方 ピーマン、キャベツ、豚肉、ネギ、ニンニクをそれぞれ下ごしらえしたあと、砂糖、チューニャン、酒、醤油、味噌、コショウ、トウバンジャン、調味料で味つけ。
■ポイント 下ごしらえの油通しの加減。
クンポーユイファー
■作り方 イカ、ネギ、ニンニク、干し唐辛子を下ごしらえし、チンジャオロースーと同じソースで味をつける。
■ポイント 味つけのバランスを調える。
高菜のスープ
■作り方 トリガラとゲンコツのスープに高菜、豆腐、卵白の具を入れる。塩、コショウ、醤油で味つけ。
■ポイント 卵白でスープが濁らないよう、沸騰させない。