わかりやすいHACCP(9)増やさない<その1>温度管理

1999.10.04 189号 20面

細菌が繁殖する危険温度帯は五度C~六〇度Cの間です。この温度帯に食品を四時間以上置かないというのが原則です。なま物は冷凍庫、または冷蔵庫にしまう。材料の下ごしらえは手早く行い、下ごしらえの終わった生食材は、また、冷蔵庫などにしまうということです。

さて、今回は冷凍・冷蔵庫での保管を考えてみましょう。冷蔵庫や冷凍庫に保管すれば材料や調理済みの食材の細菌が増殖しないかというと、必ずしもそうではないのです。温度が正しくなかったり、冷蔵庫に詰めすぎたり、手入れが悪いと、温度が保たれず、細菌が繁殖するおそれがあります。冷凍・冷蔵庫の正しい使い方を見てみましょう。

冷蔵庫の温度は一~五度C、冷凍庫はマイナス一八~マイナス二二度Cの温度帯です。まず、あなたの店舗の冷凍・冷蔵庫がこれらの温度帯にあるかどうかの確認が必要です。温度計は付いているでしょうか? 温度計は正しく作動しますか? 定期的に正確な温度計を用意して冷凍・冷蔵庫の温度計が正しく作動するか確認しましょう。

●冷凍・冷蔵庫の設定温度よりも保管中の食品の中心温度が大事

温度計が正確できちんと冷却する冷凍・冷蔵庫に入れても、食品が冷却されて基準の温度にならないといけません。冷蔵庫や冷凍庫に食品を保管する場合には冷凍・冷蔵庫の設定温度ではなく、保管中の食品の中心温度が冷凍や冷蔵の温度帯になっていなければ細菌の繁殖を防ぐことはできません。

●食品の冷却をするには風通しをよくする

最近の冷凍・冷蔵庫は庫内を冷風が循環して食品を冷却するようになっています。ということは、庫内のスペースがないくらいぎっしりと食品を詰め込むと空気が循環しなくなり、食品を冷却できなくなります。庫内スペースの五〇%くらいの余裕を持って食材を保管するようにしましょう。

●冷凍・冷蔵庫の作動原理を理解しよう

冷凍・冷蔵庫は冷媒であるフレオンガスを循環し、熱を移動することにより冷却します。冷凍・冷蔵庫内を冷却するにはその熱を外に放熱する必要があります。冷却機は庫内にある冷却部分と、室外にある放熱部分に分かれます。

フレオンガスをコンプレッサーで圧縮すると高温高圧のガスになります。そのフレオンガスを車のラジエターのような形をしたコンデンサーに通し、外気の空気で冷却します。そうすると低温の液体となります。その低温の液体を膨張弁を通してエバポレーターで膨張させると、揮発熱で周りを冷却します。

冷凍・冷蔵庫の中にある冷風を出す部分がエバポレーターで、冷凍・冷蔵庫の上部や横、外部にある熱風を吐き出す室外機がコンデンサーなのです。エバポレーターで発生する冷気のカロリーとコンデンサーで放熱する熱気のカロリーは等しい値となります。

つまり、きちんと冷風を発生するためにはコンデンサーで放熱をしっかりしなくてはいけないということです。

●冷凍・冷蔵庫の環境

冷凍・冷蔵庫は厨房内に置かれていたり倉庫に置かれている場合が多いようです。冷凍・冷蔵庫は風通しがよく、室温が高すぎない場所に設置しなければなりません。コンデンサーを冷却する空気の温度が高ければ十分に冷媒を冷却できないので、庫内の冷却を十分に行えません。

冷凍・冷蔵庫の能力の基本設計は三〇度C以下がほとんどなので、それ以上高い場合には冷却が不十分な場合が出てきます。庫内が冷えないだけでなく、オーバーヒートしてコンプレッサーが止まったり、焼き切れたりする危険があります。

営業中だけでなく、夜間に排気ダクトやエアコンの作動を止めた際に室温が上がりすぎないかどうかもチェックしなければなりません。

●コンデンサーの清掃

冷凍・冷蔵庫を置いてある場所の温度が低くても、コンデンサーに油分やゴミが詰まると、風通しが悪くなり冷却能力が落ちます。フィルターが付いている場合は定期的にフィルターを清掃するか、コンデンサーを直接洗浄して汚れを落とします。

厨房内に設置してある場合には油汚れが付着し、その油にほこりが付いて詰まりやすいのでより一層の注意が必要です。

●エバポレーターの霜取り

冷凍庫の庫内温度は非常に低いので、冷風を発生するエバポレーターに霜が付着します。付着した霜が厚くなり氷のようになると熱の伝達が不十分になり、冷風の量も減り、冷却能力が落ちてきます。エバポレーターでの温度交換が十分でないと、フレオンガスが液体のままコンプレッサーに戻り、コンプレッサーを破損するおそれもあります。

そのために、自動的に霜取りをするようにタイマー形式で霜取りをしたり、自動的に霜取りをする装置が付いています。タイマー形式の場合には開け閉めをしない夜間やひまな時間帯に設定します。霜取り装置は壊れることもあるので定期的にエバポレーターの状態を目で確認する必要があります。

冷凍・冷蔵庫が正しく作動しているからといっても安心してはいけません。定期的に庫内を清掃殺菌し、保管する食品を汚染しないように注意します。

(経営コンサルタント/立教大学社会学部非常勤講師・王利彰)

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