不況時の店舗経営 「もつ鍋元気」(鍋料理) ブームの発信地、BGMはジャズ

1993.01.04 19号 15面

福岡、博多で居酒屋、屋台料理として定着していた「もつ鍋」が、あるきっかけで東京・銀座でリファインされてお目見えし、それがマスコミに取り上げられたせいで、全国ブランドへと急上昇。東京では冬場のナベ物シーズンにアジャストして、一大“もつ鍋ブーム”を呼んでいる。

そのもつ鍋ブームの発信源が、銀座八丁目の「もつ鍋元気」で、店は連日連夜の大入りで12月いっぱいは予約で超満席の状態だという。店のオープンは九一年7月。満一年を過ぎたところであるが、当初の売上げ目標を二、三割以上も上回る繁盛ぶりで、うれしい悲鳴が止まらないといった状態にある。

出店当初の予想では日商一一〇万円前後とみていたが、忘年会、宴会シーズンを迎えた現在では平均日商一四〇万円以上という好成績で、この商品の吸引力の大きさを物語っている。

店舗はビルの地下一階。店の広さ五〇坪、客席数一〇〇席という中規模の大きさ。ビルの地下一階の出店で銀座八丁目というロケーションの悪さがあるが、しかし、ビル自体は歩道の広い銀座中央通りに面しているので、店へのアプローチは容易である。

しかも、ビルの一階にはハンバーガーチェーンのマクドナルドが出店しており、結果的にはこれがアイキャッチャーの役割を果すことになり、立地条件を高める要素にもなっている。狭い急な階段を下りていくと、ガラスのトビラがあり、それを開けて中に入ると左右に客席が拡がる。

店内はほぼ中央で低い間切りの壁面で二分され、一つの空間にアクセントをつける形になっている。しかも左右のフロアに一段ほどの段差があって、左右の床面はフラットではない。段差は左フロアが低く、右が高いという構図であるが、右手フロアには長テーブル席に加えカウンター席(一〇席)を設置するという客席構成になっている。

加えて、右手フロアの左寄り中央部に調理場“オープンキッチン”があり、ここで大皿にもつと野菜を盛り付けて、各テーブルへと仕出す仕組みになっている。調理場はコの字形に、客席の長テーブルで囲まれる形になっており、客はもつ鍋を食べながら、その盛り付け作業の実演を居ながらにしてウォッチングすることができる。

つまり、このオープンキッチンは店の中心軸、求心点として、当初から意図的に配置したということが理解できる。

「地下での出店ですし、どこか狭苦しいという物理的な制約がありましたから、ゆとりの演出と店の雰囲気が単純にならない工夫をしたつもりですが、内装は全体的には落ち着きとシンプルさを打ち出し、旧来のもつ鍋のイメージを払拭するよう心掛けたのです。ですから、店内のBGMもジャズを流すなどして新しいもつ鍋のイメージを創り出しています」(桜井研二店長)。

実はこの店は、以前は㈱サテンドールジャパンが経営するジャズレストランだった。まず、店のオーナーが食通家として知られていることもあるが、店にミュージシャンや芸能人、文化人など多様な人種が出入りするうちに、博多のもつ鍋が話題になり、それで東京にももつ鍋の店をということになったのである。

結局は二年間の研究期間をおいて、店はもつ鍋料理の店として再出発したのである。

それで、このいきさつがマスコミに取り上げられて大反響を呼び、もつ鍋ブームを呼び起すきっかけとなったのである。「とにかく、余りの反響でビックリしました。店ももう6時、7時で超満席状態ですので、飛び込みではまず席は確保できないという過熱ぶりです。ですから、他のお客様のこともありますから、店での滞留時間は二時間以内にお願いするシステムにしているほどなんです」(桜井店長)。

大繁盛で文字どおりに、うれしい悲鳴を上げているという図式であるが、一方においては日本人はお定まりの“熱しやすく、冷めやすい”という民族的性格を有しているので、これがマスコミに乗った一過性のブーム、トレンドに終るか、それとも“定番メニュー”として定着するのか、大いに業界の関心を集めているところでもある。

しかし、こういった関心事をよそに、同店経営主体のサテンドールは、すでにFC展開を始めており、赤坂、神戸にフランチャイズ店をオープンしている。この二店に続いても積極的な加盟希望があり、九三年2、3月にかけて世田谷(用賀)、大宮、青山、新宿と出店を具体化する計画にある。また、このほか、銀座本店に続く直営出店として、六本木にも出店を具体化する。(加盟金一五〇万円)。

「多少ブームが過ぎれば、人気は落ち込むことになるかも知れませんが、もつ鍋はブームに関係なく、“ヘルシーメニュー”としてのすぐれた特質がありますから、質の高い商品の提供と店舗の運営をしっかりおさえていけば、他の鍋料理同様に定着していくと考えています。ですから、何も心配していません」(桜井店長)。

・住 所/東京都中央区銀座八‐八‐五、太陽ビル地下一階

・電 話/03・3575・4866

・営業時間/午後6時~同11時、土・日・祭午後4時30分~同10時(年中無休)

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