新店ウォッチング:米国風ディナーレストラン「TGIフライデーズ渋谷店」
急成長を続ける外食チェーン次世代組の中でも、卓越した業態提案力でひときわ抜きん出ている感のあるワタミフードサービスが、またまた話題の外資系ディナーレストラン業態「TGIフライデーズ」をオープンした。
メニュー多彩
この店は、ワタミフードサービス社と米国でTGIフライデーズを展開するカールソン・レストランツ・ワールドワイド社が折半で出資した新会社により出店されたもので、ワタミグループの新しい業態展開の柱として期待されており、すでに来年初頭には横浜で二号店の出店が決定しているとのことだ。
渋谷の中心である公園通りからすぐのビル二階に位置する店は、アンティークの玩具などを飾り付けた楽しい雰囲気にあふれた内装で、店内中央のひときわ高い位置にカウンターが設けられ、その周りにボックス席とテーブル席が配置されている。
メニュー構成は八割が米国から、残り二割は日本でアレンジしたということだが、なぜか商品名はすべてカタカナだ。ディナーレストランの名に恥じず、四〇〇種類以上のカクテルや、容量違いも含めて二〇種類以上のビールが提供可能ということであり、メニューブックにもオリジナルを中心に五〇種類以上のカクテルが掲載されている。
価格帯は、カクテルが六五〇円~八五〇円、ビールが五八〇円~、ツマミとなるフライ系商品は四八〇円~、その他ハンバーガー七八〇円、ピザ八八〇円、サンドイッチ八八〇円~九八〇円などとなっており、居酒屋「和民」に比べると比較的単価は高いが、ポーションは米国並みのボリュームで、ひと皿で十分満足できる。ジューシーなパテがおいしいハンバーガーは、ファストフードでは味わえない本場の味だ。
新鮮サービス
また、スプーンを突っ込んだままマグカップで提供されるコーヒーや、コースター代わりの紙ナフキンなど、いかにもアメリカらしいストレートなサービスは、若い世代にとっては新鮮に映ることだろう。
メニューブックは、写真に加えてかなり詳しい説明が記されており、分かりやすい。なお、午後5時以降は一〇%のサービス料を徴収している。
米カールソン社では、同業態を全世界に約五〇〇店舗展開しており、今回のワタミ社との提携によって、日本でも多数の店舗展開が期待できるとみている。
店を訪れたのは、オープン後一ヵ月ほどたった、まさに金曜日の夕方だったが、午後5時過ぎにはすでに半数近くのテーブルが渋谷の若者たちによって埋まっており、かなり好意的に受け取られていることが分かる。
外国人客の数も多く、みな「勝手知ったる店」といった様子で、のびのびと店を利用している。うわさによれば、開店してすぐに業界関係者が多数視察に訪れ、一〇〇冊のメニューブックが持ち去られたというが、果たしてお客はこの店をどう使うのか? また、ワタミ社がこの店をどう育てるのか? 業界関係者の興味は当分尽きないことだろう。
◆TGIフライデーズ渋谷店/会社名=ティージーアイ・フライデーズ・ジャパン/開業=一九九九年8月23日/店舗面積=四二〇平方メートル/客席数=二一五席/営業時間=午前11時~翌午前3時(金・土・祝前日は午前5時まで)
●取材者の視点
その昔、TGIフライデーズは某外食企業グループの経営で六本木のロアビル近くに小さな店があった。当時の六本木は、平日にだれもが遊びに行くというような場所ではなく、知る人ぞ知るという感じのまま、いつのまにかなくなってしまった。その後、同グループでは、この業態を展開した「H」や「B」といったチェーンを何店舗か展開したが、定着せず撤退してしまったという経緯がある。
当時こうした米国のディナーレストランを模した飲食店が数多くあり、四〇歳以上の世代には、内装や商品の至るところに懐かしさがあふれる店である。
しかし、この店で最も素晴らしいのは従業員。トレーニングのレベルはかなり高く、多くのFR店では太刀打ちできない水準だろう。これなら、お客に「センターのバーカウンターに座ってみたい」と思わせることも可能だ。
問題は、米国式の品ぞろえにお客が満足してくれるかどうか。フレンチフライやコーヒーの温度などが少し気にかかった。
ちなみに、「TGIフライデーズ」とは、一九七〇年代に米国ではやってた言葉「Thanks God It’s Fryday=神様ありがとう、今日は金曜日だ!」から来ている。週休二日制が定着していた米国では、金曜日とは仕事から解放される週末のことだったから。
日本で言えば、少し前にはやった「ハナ金」という言葉と同じような意味合いで、多少の皮肉も交えて使用され、当時は映画のタイトルにもなったくらい有名な言葉であり、アメリカ人ならだれでも知っている(みだりに神の名を呼んではならないという習慣からGodではなくGoodnessと言い換える場合もある)。
この言葉通りに週末の日本人を集めることができるかどうか、同店の今後の展開からは目が離せない。