めざすは一流MISS料理人:エコール・キュリネール国立・茂呂晃枝さん
「料理界の道の厳しさをひしひし感じます」
この春、辻調グループ校エコール・キュリネール国立(フランス料理専門カレッジ)に入学、毎日の授業・実習に励む茂呂さんはこう切り出した。
「先生方はとても厳しいです。教授陣には実際にお店を切り盛りする現役シェフもいて『こんなのはお客さまに出せない』とストレートにしかられる。盛りつけや出来上がりのタイミング、要領の悪さなど、容赦なく指摘されます。そんなときは『はい、すみませんでした』と素直に謝りますが、自分のできなさ加減が悔しくて、ぐっと涙をこらえることもあるんですよ」
茂呂さんはこの学校に入る前に短大を出て、栄養士の資格を持っている。母親は管理栄養士。子どものころから調理の手ほどきを受け、休みの日などは家族七人分の食事作りをこなしていた。将来、プロの料理人になることを夢見て、短大を卒業したらこの学校に入学することも決めていたという。
一年間をともにするクラスメートには「調理の知識の豊富な人がいて、『負けられない』と思います。知識は経験、実践によって身につくもの。私も夜は学校で紹介されたフランス料理の店に毎日バイトに通っています。学校で習うこととはまた違った勉強ができるのが魅力ですね」。
朝7時半起床、学校は午前9時から午後4時半まで。授業が終わると、ひと駅隣に位置するレストランに直行。夕方5時から夜10時まで調理スタッフとして働く。盛りつけなど最終工程を担当させてもらうなかで、「シェフがどんな料理をイメージしているか、考えられるようになったのが収穫」という。
「授業でも言われたことなんですが、同じ料理でも最後の整え方でがらりと変わってしまう。シェフの考え方通りに仕上げてはじめてお客さまに出せる料理になる。学ぶ楽しさがありますが責任は重大ですね」
来年から一年間、辻調グループフランス校への留学・研修が決まっている。向こうで学びたいことは山ほどあるそうだ。
「本場の食材を目にして、その扱い方を知りたいというのがひとつ。それからフランス人の料理や人間に対する考え方、日本との違いを知り、自分のなかに取り込みたい。何より未知のところへ行って人間的に強くなりたいですね」と抱負を語る。
短大でフランス語を専攻していたが、いまも学校とバイトの合間をみてフランス語会話学校へ通うなど、準備は万端。ただ、フランスまで行く必要があるのか、先に就職すべきか不安になった時期もあったという。後押しをしてくれたのは母親の「頑張ってやってみなさい」との励ましだった。
「バイト料は生活費に消えてしまっているので、留学費用は親からの借金。頭が上がりませんが、働きはじめたら必ず返します」
再来年帰国したら「働きたい」と密かに思っているフランス料理店(都内)もあるそうだ。
「実際にそのお店で食べてみて、味に感動したのと、お店の雰囲気がとてもよかったのであこがれているんです」
二〇〇一年春、厨房で張りきって腕をふるう茂呂さんの姿がくっきりと目に浮かぶ。
◆もろ・あきえ=一九七八年栃木県生まれの二一歳。祖父、祖母、サラリーマンの父、管理栄養士の母、高校生の弟二人の七人家族。短大時代はチアガールとして活躍、いまでもそのときの仲間と練習を見に行くなどで息抜きをする。趣味は食べ歩き。大学生の彼氏も茂呂さんの夢を応援してくれているそうだ。
◆辻調グループ校エコール・キュリネール国立=東京都国立市富士見台二‐一三‐三、Tel042・571・1104