飲食店の強敵、CVSの弁当と惣菜を追う
食の外部依存率が年々高まるに比例して、その牽引役であるCVS(コンビニエンスストア)弁当・惣菜の企画と品質は、充実化の一途をたどっている。CVSの弁当・惣菜の売上げ比率は店舗総売上げの三〇%を占めるというが、利益率の貢献度ではその数字をはるかに上回るという。全国の飲食店は二〇万店舗。それに対しCVSは五万店舗。業種業態の枠組みを超えた飲食店の強敵、CVS弁当・惣菜の動向を追った。
コンビニエンスストア(CVS)には、弁当、おにぎり、麺、惣菜、調理パンなどのチルド系商品があり、コンビニ業界ではこれらを総称してフレッシュフーズ(FF)と呼んでいる。
弁当は、「上乗せ系弁当」「丼」などのように飯の上に料理を乗せたタイプ、定番の「和風幕の内」タイプ、「洋風・中華系」のタイプ、「すし」、さらに白飯や赤飯、きのこご飯といった飯主体の「単品」のタイプなどに分類できる。
おにぎりは、コンビニ独特の購入者が自分で海苔を巻く「手巻き」タイプと、海苔がすでに巻いてある「直巻き」タイプとがある。
麺は、「スパゲティ」、そばのような「冷やし麺」タイプ、「焼きそば・うどん」などがあり、アルミ鍋で購入者が調理する「煮込み麺」タイプ、湯を入れて温める「カップ入り麺」(麺は生麺であり、インスタントのような乾燥麺ではない)と五つのバリエーションがある。
惣菜は、「サラダ」「和惣菜」「洋風惣菜」「中華惣菜」に分類され、コンビニエンス業界では「生野菜サラダ」はサラダと別のカテゴリーとして存在する。
調理パンは、主にサンドイッチ系のアイテムである。
これら以外に、たこ焼き、お好み焼きなどの「軽食的惣菜」が並んでいる。
このように、商品カテゴリーを分類化してみると実に多くのジャンルによってFF商品は構成されていることがわかる。
レストランなど外食産業の商品形態と大きく異なる点は、商品に賞味期間があることだ。
FFにおいても、弁当と惣菜の賞味期間は異なり、弁当がほぼ一日程度であるのに対し、惣菜は二~三日間である。このことは、販売期間も同様であることを示し、惣菜は弁当に比べ販売可能期間が長いために優位性がある。
当然のことながら、陳列ケース(棚)の保存温度もセブンイレブンを例に取れば、弁当は一五度C以下、惣菜は一〇度C以下と厳密に規定されており、それぞれの商品管理も異なっている。
また、スパゲティは麺のジャンルだが、その管理は弁当の範ちゅうに入れず、惣菜の管理体系と同様としているコンビニが多い。
さらに、販売期間を過ぎ売れ残った商品は、ケースより即時撤去しなければならない管理も要求されている。
コンビニのFFのコーナーは、一見整然と商品が陳列されているように感じるが、それは商品のアイテム数が多い上に、そのカテゴリーごとに複雑な管理が求められていることの結果である。
保存期間のあるFFは、販売できる時間的な優位性とは裏腹に、安全であることが求められ、従って商品管理に手間のかかる、店舗運営にとっては、やっかいな商品群ともいえる。
コンビニのFFは、添加物の使用による安全性が、取りざたされるケースが見受けられる。だが、現実には食中毒などの事例はきわめて少なく、紙面を騒がすほどのものではない。
調理した食材を何種類か組み合わせ、一つの弁当として完成させ、コンビニに納品する企業を「ベンダー」と称しているが、ここでの使用する原料、製造方法、配送過程に至るまで徹底した衛生管理が行われている。
例えば、弁当に使用する冷凍のハンバーグなどの加工品は、仕入れ時の衛生基準が厳しく、コンビニによっても異なるが、三〇度Cで三六~四八時間の保管後、大腸菌数は陰性、一般性菌数は10-5以下と規定されている。販売中であってもこの基準に反する結果が出れば、すぐ販売中止となる。
製造し弁当、惣菜となった商品はカテゴリーによってそれぞれ異なるが、出荷時の衛生基準によって、徹底した安全管理が行われている。
一般家庭内での調理の方が、衛生的危険度は高いと思われるが、しかし、いったん食中毒の原因を発生させるような製造が行われれば、その社会的影響は、計り知れないものとなるので、前記のような厳しい安全管理が徹底して行われているのである。
すべてのコンビニのベンダーで、同様の管理が行われている、と断言できないが、過去のO157による食中毒の発生事例は、コンビニ業界からは報告されていないことからもうなずける。
ホテル、旅館、外食産業における食中毒の発生はコンビニに比べはるかに高い。それは、先に述べた衛生管理の徹底と、FFに求められている短期間の保存性を実現するため、製造上の過程で厳しい品質管理をしているからである。
コンビニ業界を擁護しているように思われるかもしれないが、食品にとって最も重要な要素である「安全」について、レストラン業界は、コンビニ業界から食品にとって見習うべきことがあるようだ
コンビニユーザーのニーズは実にシンプルである。安価でボリュームがあり、短時間で購入でき、それなりの味であれば良い。
たしかに、見た目以上に高級感があり、味が良いに越したことはないが、そのためにボリュームを削られることを、コンビニユーザーは好ましくないと判断するようだ。
すべての顧客がボリューム主体のニーズをもっているわけではなく、約四割といわれる女性客の多くは、ヘルシー、ファッション性といったトレンディーな面を求めている。
コンビニは、レジでのポスデータをもとに、購買者のニーズを詳細に分析し、ターゲットに対する多様な商品構成を、取引業者である食品メーカーを取り込んで分析解明し組織的なマーチャンダイジングを行っている。
従って、消費ニーズに対し敏感で、その商品戦略は的を得たものであり、なにより短期間で対応可能な体制がシステマチックに出来上がっている。このことが、他の食業態と一線を画している点である。