超繁盛店ルポ:イタリアンレストラン「ピッコロボスコ」
滋賀県を基盤とする新興イタリアンチェーンが昨年9月、初の首都圏進出の店舗を神奈川県の港南台にオープンした。店舗名は「ピッコロボスコ」。港南台といえば、駅の乗降人口が一日平均四万人強というマンモスベッドタウン。チェーンの中でも売上げナンバーワンというサンデーサン港南台店やフィオーレなどのライバル店が軒を連ねるこの土地を、「あえて選んで出店した」という強気の態勢だ。
ピッコロボスコは、平成8年に一号店を滋賀県長浜市にオープンした。
運営する(株)ポス・ウェーブの社長、江畑明氏は、写真スタジオからの転身。「地元にはしゃれたおいしい店がない」と思ったことがきっかけという。
デザインを自ら手がけたというあずき色の屋根に白い壁の一軒家レストランで、手作りのイタリア料理を提供した。これが地元でまたたく間にブレークし、株式会社を興し本格的なチェーン化に力を入れはじめる。
琵琶湖を中心に、ドミナント式に二号店、三号店と店舗を増やし、岐阜県にもFCを出店、わずか三年で直営五店、FC二店を展開させるまでになった。
一店舗の平均売上げは月一〇〇〇万円。平成11年度は年商五億円を見込む。
目指すは全国制覇の一〇〇店舗。「二〇〇四年には株式上場も視野に入れている」という勢いだ。
料理は「すべて手作り」が基本だ。「既成品を使ったら大手にはかなわない」との判断から、既成の冷凍・加工品は一切使わない方針を貫く。
「手間はかかるが、その分お客さんとの話題づくりにつなげられる」(同)との思いもある。
同店のメニューで特に人気が高いのが、イタリア・ミラノから直輸入した石窯で焼くピザ。
生地が薄いのが特徴だが、その薄さはまるでクレープのよう。一〇〇gの生地を三二㎝の円形までのばす。
「お客さんには、ピザだけではなく、前菜やパスタなどすべて食べてほしいので軽く仕上げてある」(同)
具も生地に合わせてシンプルで、お客さんには「ピザのようでピザじゃない」と好評だ。
グランドメニューを決めるのは主に小森総シェフの担当だが、各店のシェフ(店長)が創作メニューでしのぎを削るのも、この店の特徴だ。
創作メニューは、まずランチの前菜に出され、フロアマネジャーが、評判が良かったと見れば、夜のお勧めメニューに載る。それで反応が良ければ、月二回の会議に諮られて、晴れてグランドメニューに昇格するという仕組み。
常に実力が問われる切磋琢磨の世界だが、お客にとってはいつも新しいメニューの提案があり、飽きさせない。
またデザートに対する力の入れようも、同店の売れ筋ベスト3に、デザート盛り合わせがランクインしていることでうかがえる。
「食事の締めとして、デザートを印象のない一品にしたくない」(同)とのこだわりから、デザート専門のセントラルキッチン「デザート工房」をつくった。
デザートは毎日ここから各店に配送される(港南台店を除く)。
次の課題は客単価を二〇〇~三〇〇円アップさせること。食前酒のカクテルの充実や本格的なエスプレッソの導入で、ドリンクの比率を現在の二割から四割に引き上げることだ。
また大皿メニューは割安感がある一方、少人数ではオーダーしにくいとの声にこたえて、小皿に替えていくという。
チェーンの全国制覇に向けての布石は、港南台店に始まり、二〇〇〇年は4月に江ノ島店のオープンがすでに決まっている。
年内は、あと神奈川に一店、滋賀に二店を出店する計画だ。「都内にもできれば年内に展開したい」(同)と意気込む。
これまで滋賀・岐阜での店舗は、郊外型が主流だったが、港南台は初のビルドインとなった。
郊外型の山小屋風というコンセプトに対して、ビルドインは逆にコンセプトを固定せず、あらゆる物件に対応できるよう、ハードにはこだわらない。
「ウチの強みは、あくまで人間力とオリジナルの手作りメニュー」(同)
店舗網の拡大に向け、本格的にFCの公募を準備中。店長となる人材の教育にもさらに磨きをかける。