アメリカ訪問記(下) 繁盛する個性派レストラン

1992.04.20 2号 19面

健康指向を前面に、高齢者にも呼び掛けて成功しているスープ・レストラン‐ロサンゼルス郊外にある「スープ・エクスチェンジ」と名付けられたこのレストランの店頭看板は、スープとサラダで特色付けられている。

スープあるいはサラダの片方を食べるか、またはスープとサラダの両方を食べるかの選択で料金が異なる。しかし片方の場合五・二五㌦で、両方の場合五・九五㌦であるから、両方の方が得になっている。

そしてこの料金表の特色は、六十歳以上の高齢者は一〇%引き、十二歳以下の子供は三〇%引きそして四歳以下の幼児は無料となっていて、年齢によって料金が異なることである。

入店すると、最初のテーブルはスープ各種、サラダ各種が二十位も並んでおり、自分の好きなものを選べる楽しみがある。

料金の中にはパン、コーヒー、ジュース、フルーツ、デザートが含まれており、セルフサービスで自分で持って来て食べるのだが、観葉植物が多く、天井が高くて、ゆったりとした気分で食事が楽しめる。

海の上に張り出して建てられ、望楼のあるスペイン風レストラン‐サンフランシスコから南へ車で三時間、メキシコ国境にも近いサンジエゴは、アメリカ海軍の軍港もある良港で、昔は魚もよく獲れた漁港でもあった。

ところが魚が獲れなくなって、魚の加工場や倉庫が使われなくなり、古びて荒れ果てた地域になり困っていた。

そこでこの地域を再開発することになり、古い工場や倉庫が取り壊されて、新しくホリデー・インやマリオットのような大型ホテルチェーンが高層ホテルや宴会場を建てるようになった。

また海に面して昔のスペイン村のイメージで、幾多のレストラン、土産物、マリーナ用品等々を提供するユニークなショッピング・センターも出来上がった。

その一角にこのレストラン「サンジエゴ・ピヤーカフェ」がある。新鮮な魚貝料理を売り物にしていて、おいしい料理を提供する。

しかしそれだけでなく、お客をひき付けるものがある。

それはこのレストランが海の上に張り出した桟橋の上に建てられていて、よく目立つからである。また古めかしい木材を使って、いかにも昔から建っていたように見せかけ、古い掛け時計や伝統を思わせる調度品で雰囲気を作り出している。

海の中に張り出しているので、食事をしていると海鳥がやって来て、コツコツと窓を叩いてエサをねだってくるのも楽しい。

《料理プラスα》 上述してきたように、それぞれの個性的レストランはしっかりしたメニューを持ってお客をひき付けている。この基本をまず大切にしなくては、お客にとって魅力はない。

しかし豊かな生活者は、それ以上のものを求めてくる。それは場合によっては年齢層によって異なる健康への欲求であったり、忙しい生活の中での休息の一時であったり、自分の人生の中の記念日を大切にしたいという欲求であったりする。

このような生活者の高度な欲求を、地域の特色を生かして満たし、チェーン店にない魅力を出して行けば、繁盛店として勝ち残る道が開けてくる。

(経営士・西村史郎)

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