全国カレー繁盛店特集:札幌「ミルチ」

2000.06.05 205号 3面

札幌の中心部から車で一五分、インドカレー「ミルチ」は、閑静な住宅街に位置するインドカレーの専門店。木のぬくもりが感じられる落ち着いた雰囲気の店内に、客の姿が絶えることがない人気店である。

ミルチのカレーの最大の特徴は、水をいっさい使わないで作られているということ。基本的なレシピは、千切りにした大量の玉ネギをサラダオイルできつね色になるまで炒め、それを一〇時間以上煮込んで玉ネギから出る水分だけでカレーのベースとなるスープを作る。

そこにターメリック、コリアンダー、チリ、クミンなど二三種類のスパイスをブレンドしたカレー粉、種を取り除いた新鮮なトマトを加え、それぞれの味がなじむよう弱火でさらに長時間煮込む。こうした手間と時間のかかる工程で作られたカレースープが、すべてのカレーメニューに使われている。

店主自らブレンドするスパイスは、インドまで出向き、現地の料理人から基本を学び、日本人の舌にあうように調合したもの。長い時間をかけ、研究と試行錯誤を繰り返した結果、たどりついた味である。

メニュー構成は前述したカレースープ(レギュラータイプ)に生クリームやカシューナッツなどを加えまろやかな味に仕上げたスペシャルタイプがある。

レギュラータイプは、スペシャルタイプよりも辛さがストレートにでて、インドカレー本来の辛さと味を実感できる。レギュラーとスペシャルで合計五二種類のカレーが用意されており、リクエストがあればそれらをブレンドして提供することもある。

人気メニューの「マトン・パニール」は、数種類のスパイスを入れたスープでボイルしたマトン(マトン独特の臭みを取り、下味をつけるため)と、カマンベールチーズが溶け込んだカレースープを組み合わせたもの。

辛さは七段階から選べるが、店主いわく「インドカレーの本当のうまさと辛さを実感していただくために、自分の舌にちょうどよい辛さよりワンランク上の辛さをおすすめしています」とのこと。

同店では常に変わらぬ味を提供するために、週のはじめ二日間は長時間かかるカレースープの仕込み日にあて、店を閉める。営業日を削ってまで、カレーの味にこだわるこの店ならではの選択だろう。このこだわりと苦労の末にできたインドカレーの味は、多くの常連客を呼んでいる。

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