全国カレー繁盛店特集:名古屋「えいこく屋」

2000.06.05 205号 4面

店主の荒川氏は、カレーをはじめインド料理を手がける以前から、紅茶の輸入に着目していた。「えいこく屋」は、インド料理と紅茶を、店主が買い付けたスパイスや茶葉で楽しませてくれる店として、二〇年以上の実績がある。名古屋でここを知らない人はいないとまで言われる老舗だ。

名古屋市覚王山(かくおうざん)の日泰寺(にったいじ)門前通りは、若者のまちづくりグループが放つイベントなどで注目されているところ。そうした中にある、戦争でも焼けなかった旧式家屋の店舗は、異国の食文化とうまくマッチし、落ち着いた空間となっている。そこで味わう料理と紅茶は、氏の言う「満足していただくもてなしの気持ち」そのまま。

人気メニュー「ミックスグリル」の大きな銀の皿は、深い銀鉢に入ったカレーの芳香と、本格的なタンドリー(土窯)で焼かれた大きなナンの香ばしいにおいを連れてくる。微妙に調合された香辛料の衣で食欲をそそるのは、一緒に盛られているタンドリーチキン。シシカバブ、ドライカレー(米飯)、サラダ、どれも香辛料が味の決め手なのだが、すべて違う感想がもてる。

サービスに付くチャイはインドのミルクティー。濃厚なミルクの味と紅茶の香りが、香辛料のよく効いた料理と対照的で、男性でも十分に満足できる構成と量だ、と好評。「名古屋でも、うちは比較的安価ですからね」と言う荒川氏の言葉が思い出される。

「大切なのはコミュニケーションだと思っています。自信のある食材ですが、接客や対応にも気を使います。朝日カルチャーセンターでここの料理を厨房のインド人コックと教えに行くこともあり、インターネットのホームページでは、通信販売などご愛顧いただいたお客様は四〇〇〇人以上になりました」

カレーのように一般庶民の味にまで浸透したメニューを、ここでしか食べられないと限定する要素は、食材と雰囲気のオリジナリティーだと荒川氏はつなぐ。そして、それを続けるため、仕入れる信用と販売する信用も不可欠なのだと。

年二回の買い付けには、インドはカルカッタ、スリランカ、ヨーロッパにまで足を運ぶ。荒川氏の試みはまだまだ続くようだ。

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