宅配中華特集:上海エクスプレスとチャイナクイックが火花
宅配ピザや宅配ずしが停滞するなか、宅配中華が急速に認知度を高めている。先駆の「上海エクスプレス」に続き「チャイナクイック」が多店舗化を本格的に始動。激しく火花を散らしている。「チャイナエキスプレス」「香港の達人」などの新興勢力も相まって、宅配市場の一翼を築く勢いだ。
宅配中華が新業種として認知されたのは「上海エクスプレス」(以下上海)が東京都世田谷区にオープンした四年前。それまで、中華料理を宅配専門に特化した生業店は存在したが、上海はオーダーを本部で一括管理する新システムの導入により、困難とされてきたチェーン化に成功。宅配業界に名乗りを挙げた。
中華料理は熟練料理人が一品一品を手作りで仕上げなければならない。そのため現場のオペレーションは複雑極まる。生業店(個人店)レベルの宅配店特化は可能であっても、チェーン化は不可能とされてきた要因もここにある。
だが上海は、店舗にかかる電話オーダーを本部に転送・一括管理することで現場のオペレーションを大幅に軽減、また、在庫調整や売れ筋分析などの係数管理も同時に処理することで、既存宅配業種に優る効率経営を展開した。
「本部がオーダー受付と数値管理をバックアップ、その余力を調理オペレーション厳守にあてた。六〇~八〇アイテムのメニューと二五〇~三〇〇種類の食材をスムーズに扱えるのは、この分担システムがあってこそ」(杉崎幹夫社長)
中華料理はメニューが豊富で日常性も抜群。「分担システム」でオペレーションの壁を突き破ると、それまで真空だった中華料理の宅配ニーズを一気に吸収した。現在一店舗あたりの平均月商は六〇〇万~八〇〇万円(推定)と好調。昨年の三菱商事の資本参加に加え、昨今はIT導入にも積極的で、早くも来年の株式公開を予定している。
この上海から分裂したのが「チャイナクイック」(以下チャイナ)だ。情報通信活用による効率よりもホスピタリティーを重視するFC店の(株)ロイヤルフーズが独立した新興チェーンである。宅配に加えテークアウト販売も手掛ける路面店戦略で、一店舗単位で比較すると上海よりも大規模出店を推進している。何より異なるのは、上海の基軸である分担システムの撤廃である。
「分担システムは大変効率的だが、本部は現場の状況がじかに見えないため、過剰オーダーを招く恐れがある。つまり延滞クレームによるデッドユーザーが生じる危険性がある。日常性の強い中華料理はリピーター獲得が命題。オーダーは店の状況を把握している現場が受けるべき」(高桑雅彦社長)
チャイナはこれまでの宅配店とは路線を異にし、都心部大規模出店を進めている。
「中華料理は住宅立地よりもビジネス立地向き。ホスピタリティー重視の法人営業を基軸に、少商圏設定による高額リピーター獲得を目指す」
チャイナのモデル店である赤坂店や麻布店では商圏半径一・五㎞で月商一三〇〇万円を売上げる。これは、当初商圏三㎞を徐々に縮小した結果という。「(1)ホスピタリティー精神で宅配→(2)リピーター獲得→(3)日常食としてのヘビーユーザー獲得という好循環が、これまでの宅配になかった商圏縮小と売上げアップの反比例を招いた」としている。
こうした相反する二社の勢いが宅配中華の活況を呼び込んでいる。業界の双璧になりそうな杉崎社長と高桑社長に最近の動向をインタビューした(3面、4面掲載)。