野菜特集:現地を訪ねる「水耕栽培工場」

2000.07.03 207号 6面

◆東京ドリーム

「洗わないで食べられる野菜」をキャッチに売り出され、しっかり定着した感のある野菜工場生産の清浄野菜。「東京ドリーム」は平成8年、わが国初の生産緑地地区内施設としてスタート。

「現在日量一〇〇〇株と限定されているので、これ以上は注文が受けられない」と悲鳴をあげる生産者の浅見三二さん。

周辺が宅地化する中、安全な野菜作りを目指し、有機野菜に取組んでいたところ、平成元年、テレビで初めてTSファームの植物工場を知ることに。

「はっきり言ってショックでした。頭を切り替えなければ」という思いから情報収集に奔走、自らが工場設置をしようと小平市にも働きかける。結果は、総費用一億四六〇〇万円中、半分が国の補助、残り半分を農業経営基盤強化資金の特別融資を受ける。

工場内は、完全な密閉型。

すべてコンピュータ制御で、光質、光量、温度、炭酸ガス濃度など野菜生育に必要な環境づくりをする。

「洗わないで食べる野菜」としてはなかなかに受け入れられにくく、従来の販路を失ったりするが、逆に「実際に食べてくれた人からは理解を得、新規客となってもらっています」

工場生産野菜は、密閉されているため無農薬栽培。またV字型立体水耕栽培装置を採用するため、他の養液栽培のように強制酸素供給の必要なく、空気中の酸素を必要なだけ吸収できる。

露地物より収穫期間がコントロールでき、サラダ菜三二日、リーフレタス三四日、フリルレタス三八日~四二日のサイクルに設定。収穫した野菜は、すべて保冷庫に保管、当日発送か翌朝にはクール便で配送される。

「価格的には二~三割高くなるが、需要は確実に伸びている。一度使ってもらえばわかるのですが」と浅見さん。今年4月から土地課税が農地並みに下げられるなど、徐々に認知されつつある。

◆「東京ドリーム」(東京都小平市小川町二‐二〇一〇‐六、0423・45・8139)生産者=浅見三二/施設面積=約五〇〇平方メートル/栽培面積=二八五平方メートル/生産品目・特徴=「洗わないで食べられる」をキャッチにリーフレタス、サラダ菜を中心にフリルレタス、ムスクラン(ベビーリーフ)などを、日量約一〇〇〇株生産。

ナッパーランドクラブ

一八〇〇坪の敷地にドーム型ハウスを構え、年間七〇~八〇tのサラダホウレンソウを生産する「ナッパーランドクラブ」。すべてが水耕栽培である。

「水耕は、ひ弱なイメージがあるようだが、うちのは葉の厚みもあり、昔ながらのたくましいホウレンソウ。周年同品質で供給できる自信をもっています」という大久保裕孝社長。水耕栽培者では最若手の三四歳。平成3年、脱サラ組スタッフ二人と組んで工場をスタートさせている。

土耕、水耕とも難しいとされるホウレンソウにあえて挑戦。葉物は太陽光が必要として自然光型をとり、「農薬をいっさい使わず、シュウ酸を低く抑えたホウレンソウ」作りを目指す。

「野菜も人間と同じ。肥料も生長過程に応じて使い分けしなくてはいけない」からと、メーンタンクから各棟ごとに設置されたタンクに濃度を変えて流す。

また今課題となっているシュウ酸については、収穫四~五日前に肥料をカットし、井戸水だけを供給することで三分の一に抑えることに成功。「このシステムは業界でも評価されている」自慢のものだ。

収穫栽培法は石綿に播種し、中二日で発芽、育苗パネルに移植後、育苗棟に移し定植させ収穫まで二八日~三〇日のサイクルをとる。

主な納入先は、「プロント」や「キリンシティ」など。売れ筋上位を堅持する「ホウレンソウサラダ」として活躍する。

工場がオープン以来、スタッフとして働く女性たちは口をそろえて「一〇年前は、生でホウレンソウを食べるなんて想像もしなかったこと。今では当たり前に食べるようになりました。それに農薬をいっさい使わないので、安心して食べています」という。

定着したサラダホウレンソウに加えルッコラも栽培品目に入り、イタリア料理店に納入されている。

今後は、三〇品目は栽培可能というシステムを活用し、量産化による低価格化にどこまで近づけるか、新たな挑戦に燃えている。

◆「ナッパーランドクラブ」(群馬県新田郡笠懸町阿佐美八〇七‐一四、0277・77・7878)生産者=久保田裕孝/工場面積=一八〇〇坪/主要生産品目・特徴=サラダホウレンソウ、ルッコラ。シュウ酸を三分の一に抑えたホウレンソウは、年間一五~一六作で七〇~八〇tを生産。

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