全国ピザ・パスタ繁盛店特集:仙台・トラットリア「ブレア・マリーナ」

2000.07.17 208号 8面

ここ五~六年、イタリア料理がはやり、淘汰される店も出てきている中、オリジナリティーを出すにはどうすべきか。「乾麺は家庭でも味わえる、よしそれなら…」。今年5月にオープンした、トラットリア「ブレア・マリーナ」は、生パスタにかけた。

もちもちっとした食感がだいご味の生パスタは、味の吸収度がよく、ゆえに個性も出やすい。しかしゆで上げるタイミングを間違えばコシが抜け、べったりしてしまう難点も。保存も冷蔵庫で四日程度が限度のため、より早い回転が望まれ、調理や扱いは乾麺より難しい。

一・四㎜の細いスパゲティのゆで時間は一~二分。調味、盛り付けも手早い。「だからパスタに関してはできればお客様にももくもくと、おしゃべりなしでベストな状態を味わっていただきたい」と小田料理長。

カルボナーラ、ジェノベーゼなどのパスタメニューは、すべて生スパゲティ、リングイネ(幅二~三㎜の平打ち)、タリアテッレ(幅五~七㎜の平打ち)の三種類から選ぶことができる。

中でもおすすめは、塩竈湾に浮かぶ桂島で採れた殻付きアサリの「ヴォンゴレ・ビアンコ」。ガーリックのみじん切りを炒め、アサリと白ワインを加えてふたをし、自家製ブイヨンを入れ強火で詰めると、香ばしい香りが漂いはじめる。ここまでしめて約一分。長く火にかけるとアサリが硬くなってしまうため、調理はまさに時間との戦いだ。

生パスタはソースの出来上がりを見計らってゆではじめ、盛り付けにはさわやかな苦みを持つハーブ、セルフィーユをあしらう。パルメザン・チーズは好みで、目の前ですりおろして供する。

また夜は注文後に再度オリーブオイルとガーリックを塗って焼き込んだ、ボリュームあるトーストもサービスされる。

近ごろ郊外店が元気な仙台市だが、あえて激戦区を避け、塩竈市の観光名所であるマリンゲートという立地を選んだことも、この店の特徴だろう。

「日本屈指の漁港に臨むロケーション柄、桂島のアサリ、塩竈港で水揚げされたマグロなどを用いたメニューを、今後はもっと取り入れていきたい」

仙台発祥の名物牛タンも、小野料理長の手にかかれば、バルサミコソースを使った「牛タンのローストサラダ仕立て」に大変身。恵まれた環境を生かした地域密着型のイタリアン、今後ますます楽しみである。

●売れ筋メニュー

〈一位〉アンティパストミスト八点盛り(一〇〇〇円、目でも楽しめる前菜の盛り合わせ)

〈二位〉殻付きアサリのヴォンゴレ・ビアンコ(六八〇円、塩竈市桂島産のアサリを使用)

〈三位〉マルガリータ(八五〇円、モツァレラチーズを使ったシンプルピザ)

●店舗メモ

◆トラットリア「ブレア・マリーナ」(宮城県塩竈市南町一‐四‐一、022・361・6131)社長=佐藤善次/営業時間=午前11時30分~午後9時/席数=七〇席/平均客数=一日八八人前後/客単価=昼一五〇〇円~、夜三〇〇〇円前後

●私の愛用食材

ブレア・マリーナほか仙台市に二店舗のレストランを経営するオーナーの実家は農家。そんな環境から、毎朝届けられる摘みたてのバジルは、ハーブ園で育ったそれとは違い、形はいびつながら肉厚、葉はしっかりとコシのある、野生味たっぷりのもの。

土と太陽からの恵みをいっぱいに受け、自然の中で力強く育ったおかげか、ちょっと葉を揺するだけで、みずみずしい香りがプーンと隣のテーブルまで漂ってくる。

アクが強く火を通しても自己主張する特徴を生かし仔羊や魚介類の料理にと幅広く使う。肉や魚介の臭みをとる名脇役として、彩りを添える。独特の香りを生かすには、バジルを最後に合わせるのがポイントだ。

バジル一番の妙味を味わえるのが、日替わりランチにもよく登場する人気のパスタメニュー「野菜たっぷりジェノベーゼ」。オリーブオイルとバジル、松の実を合わせた手作りペーストが、生パスタと絶妙にからみ合い、見て香って食して楽しめる逸品だ。

このほかスナックえんどうやルッコラ、サニーレタス、ズッキーニなど、イタリア料理に欠かせないさまざまな野菜が農園直送である。

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