お店招待席 食べるスープ料理「すうぷ屋」(東京・渋谷)ターゲットは女性層
《ヨーロッパ風》 渋谷センター街を通って宇田川方向へ。やがて行くと交番に出くわす。交番は道を左右二つに分ける形で立地しており、この店は交番から一五、六㍍ほどのところ、右手の道「宇田川通り」に面したビルの地下一階に出店している。
店舗面積七五坪、客席数八〇席の大型店で、店舗造作はヨーロッパの田舎のレストランをイメージしたというだけあって、壁面はレンガ、床は木張りとシックな造りになっている。
「地下出店の店ですから、圧迫感のない落ち着きと空間の広がりを出すよう工夫していますし、大テーブルにディスプレイしているオブジェも季節感をとり入れて、お客様の心を和ませて、ガッチリとハートをつかむ工夫をおこなっています」と語るのは、この店の経営母体である㈱ザ・ベスト(本社‐東京都千代田区)の営業本部長饒村福二氏。
同社はこの店のほかに、渋谷センター店、新宿(小田急ミロード)店の二店を出店しており、先行きFC展開を具体化していく考えだ。
この店の業態は屋号どおり、スープを商品としているが、しかし、一般的にいう内容のスープで料理ではない。“食べるルスープ”をメニューコンセプトとしていることから、多様な具をとり入れて“食事メニュー”としても十分に通じる料理内容としている。
この定番メニューは、「メアリーおばさんのとうきび畑」(六八〇円)、「コロンブスの三大発見パート2」(六八〇円)、浮気なマリアと律儀なヨハネ」(七八〇円)、「かぐや姫から五つの難問」(七八〇円)、おすまし貴婦人のこっそり夜食」(八八〇円)、「チャコの新オレゴ物語」(八八〇円)、「シンデレラのリムジン25時」(八八〇円)、「ブレーメンの音楽隊は大食漢」(九八〇円)、「美食倶楽部はいたずらほっぺ」(九八〇円)という具合。メニューのネーミングもユーモラスにつけられている。
スープの具としてとり入れる素材は、コーン、ポテト、パスタ、野菜類、カボチャ、魚介類、チキン、肉類と様々であるが、味付けはコンソメ、ポタージュ仕立てで、素材の個性、うまさを引き立たせるために、あっさりとした調理内容となっている。
「“食べるスープ”ということですから、一般にあるようなスープを作ってはいけないわけです。スープは控えめで、あくまでも個々の素材の具の持ち味を尊重する。ですから、ナべ料理のように煮込んでしまって、一つの味(スープベース)にするというわけにもいかないのです。一口にスープ料理といってしまえば簡単ですが、それなりの難しさがあるのです」(チーフスーパーバイザー飯田金造氏)。
《個性を生かす》 個々の素材の具を尊重するということは、あらかじめそれぞれを下ごしらえ、調理しておくということだろう。
すうぷの定番メニューに加えては、グラタンやドリア、ピザ、サラダ類(六八〇~九八〇円)、野菜・卵・肉・チーズ・タラコなどのサイドメニュー(五八〇~七八〇円)、さらにはシェフのオリジナルメニューやシーズン性をとり入れたシーフード(八八〇~一二八〇円)などもラインアップしている。
もちろん、コーヒー、紅茶、ジュース類に加え、ワイン、ビールなどのアルコールも揃えている。
しかし、スープ料理だけでは物足りないという向きには、スープ+ステーキ・デザート・ドリンク(二〇三〇円)といった“デイナーメニュー”もあり、多様な飲食ニーズを満足させることができる。
メニュー構成やメニューのユーモラスなネーミングからして、客層は女性(一八~三〇歳)を主体としているのであるが、その狙いどおりに全体比八割が女性客で、独自のマーチャンダイジングを成功させている。
しかし、客層を女性客に大きくウエートをおくというのは、一方においてはリスキーな面もある。女性は固定客として定着しにくいし、消費単価が上がらない面があるからである。現に同店の固定客は四、五割のウエートであるし、客単価は昼夜平均すれば一二〇〇円といったところで、そう高くはない。
だが、この店の売上げは開業七年後も順調に推移しており、バブル経済がハジケて客単価が一〇〇円ほどダウンしたものの、客数は安定しており、現下の売上げは平日平均で六〇万円、土・日・祭日で一〇〇万円という実績を上げている。
「問題はメニュー開発ですね。女性のデリケートな感性に合わせて、常に新しいメニューを導入していかなくてはならない。マンネリ化は客の来店動機を大きく弱めてしまうわけです。ですから、私どもの店では、スタッフを交じえての研究とか、お客さんからレシピーを募集するとか、またメニューのネーミンをを募集するとか、いろんな努力をしているわけです」(饒村営業本部長)。
メニューの開発は素材利用から考えていくわけであるが、材料原価は三五%、+〇・三%と厳密にしているので、この範囲での選択になる。メニュー単価が一〇〇〇円以下であるので、高い素材は使えないという節約があるのである。客に対するレシピー募集は、たとえば米と肉というように素材を提示しておこなう。これはすでに年三回の行事として定着しており、大きな成果を上げている。
●住所/東京都渋谷区宇田川町一三‐一一
フジビル地下一階
●電話/03・3462・0667
●営業時間/午前11時~午後11時
(年中無休)
(しま・こうたつ)