シリーズ・繁盛店の厨房(9) 右利きと左利き

1993.02.01 21号 17面

《しつけで順手強制》 先号では、右利きの人であるなら、左回り(時計と反対)が人体動作に逆らわない自然な動きであると述べた。人の行動が自然であるならば、調理作業による疲労が軽減される。

ところで、人間と猿との違いは、言葉を持ち、道具を作ることにあるという。言葉もジェスチャーのひとつとすれば、これに手の動作をあわせることによって、意志の伝達は完ペきとなる。

猿は最も人間に近い動物といわれ、手を器用に使うのをみると、猿にも利き手があるのかしら、と思う。確かに毛づくろいをしながら、小さな物を口に入れる動作を見る限り、そのような疑問をもつが、今のところ猿には利き手がない、というのが定説とされている。

ということであるが、人はなぜか、生まれながらにして右手利きが多い。しかし、親兄弟や教師が干渉しなければ、三〇%内外は左利きのまま成長するものだという。

ある調査によると、わが国の小学生六九〇人を調べた結果、六七人、つまり九・七%が軽微の差はあるが左利きであった。この調査結果は、人種・民族に関係なく、ほぼ国際的数値でもあるという。

右手で箸を持って食事をし、右手で筆記具を持って文字を書くのを順手として、かつては幼児のしつけの第一歩は、順手に強制することから始まった。

一方、左手利きは、何かと不便なことが多い。世の中すべて右利き用になっている。ハサミ・包丁・ナイフ・注ぎ口付き鍋・オタマ・缶切・水道の蛇口・パチンコ台・カメラ・電話のダイヤル等々例を上げたら切りがない。

左利きの人がいかに苦労を強いられているか、右利きの人には相像が及ばない。米国のある学者によると、事故やストレスによって、九歳も短命という、サウスポーにとってはちょっとショッキングな調査が出ている。

《右脳優れる左利き》 ところで、人間の脳の神経支配は、互いに交差し、右脳は左側、左脳は右側に指令が出され、それぞれの動きをする人体の仕組みである。

左脳の働きは、一般的に論理的で、学習や記憶によって物事を判断する役割りがあり、一方右脳は、造形的な発想やひらめきなど、イメージ的センスを発動する。

このことから推測すれば、左利きの人は、右脳の方が活発で、通常の右利きの人より右脳の方が優れていることになる。

このことから察すれば、左利きの人は、直観的発想をする天才がある。それはともかく、右脳支配の左利きの人は、上のデーターからみて少数派で、世にいう器用な人が多い。

周囲を見回して、芸術家、タレント、スポーツ選手など、特殊な才能によって世に出た人に左利きの人が多い。左利き必ずしも不利とはいえない。

ところが、人の原動力である一番大切な心臓はなぜか左側にある。

厨房コンサルタント

島田 稔

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