ルーツを食べる:これが漢・唐王朝料理だ!「食の中国文明展」

2000.10.16 214号 8面

古代文明へのあこがれはだれもが抱くところ。そのためか、NHK放送七五周年事業の一環として開催されているエジプト、メソポタミア、インダス、中国の世界四大文明展(8月2日~12月3日)の四つの会場に8月末現在ですでに五〇万人を動員しているという。「中国文明展」が開催されている横浜美術館に隣接した横浜ロイヤルパークホテルニッコーでは、これに合わせて「食の中国文明展」を開催、中国古代料理の漢・唐王朝料理を提供しているが、展示会との相乗効果で大好評を得ている。

「話をいただいたとき、古代料理を再現するのは初めてのこと。正直いって戸惑いはありました」という尹達剛料理長。古い文献をひも解き研究しながら、アレンジメニュー作成にとりかかる。

医食同源を貫くシェフにとり三〇年来、片時も離さず使う「中国飲食療法」をはじめ、「中国文化知識精〓」「中国酒文化辞典」「食的情趣」など次々と読みあさり、また食の時代背景を知らなくてはと、夏王朝に始まり五〇〇〇年にわたる歴史の集大成、北京・故宮博物館にも足を運ぶ。

今回のフェアに登場する漢時代は、BC二〇六年~AD二二〇年。古代の食生活も完成に近づき、穀物類を蒸しておこわやかゆに。また副食品として牛、羊、豚、犬、鶏、馬、鹿などやコイ、フナ、カニ、エビなどがあり、野菜・果物はレンコン、ショウガ、カブ、里芋、タケノコなどが栽培されていた。

調理法は、揚げ物や炒め物はなく、干したり、串焼き、蒸し焼き、燻製が主。また酒は、新石器時代から醸造されていたが、漢代から日常の飲み物となる。このころの古代食文化が、稲作とともに日本に入っている。

AD六一八年~九〇七年の唐時代は、西方文化の影響を色濃く受け、国際色豊かな時代となる。特に胡食といわれるイラン地方の食文化の影響は大。

小麦粉を使った餅類、白餅(蒸しまんじゅう)、うどんの起源となる水引などの粉食が水車の普及で急激に広まり、農作物は胡瓜、胡蒜(ニンニク)、胡葱(アサツキ)など多彩。このころから葡萄酒や団茶が飲まれ、日本へも持ち帰られている。

「漢・唐王朝料理フェアでは、当時の食材、調理法を基本に時代をイメージし、故事に則った料理も取り入れ親しみをもたせました。来店客は、ご夫婦、女性が圧倒的ですが、意外に食べやすくおいしいと評判」(尹料理長)

歴史を味わうフェアの評判は上々だ。

○大地の恵み五穀のお粥

尹達剛料理長が文献に基づきアレンジした漢王朝料理の一部。前列右から時計回りに柚の皮入り肉団子炙り中国野菜添え、雉肉とすっぽんの澄ましスープ、五穀(大豆・稲・麦・粟・黍)と牛肉のお粥、白身魚の甘酒入り甘酢あんかけ、豆腐・湯葉・竹の子の煮込み、羊肉と豚肉の燻製

◆横浜ロイヤルパークホテルニッコー中国料理「皇苑」(横浜市西区みなとみらい二‐二‐一‐三)「漢・唐王朝料理フェア」=8月1日~11月5日(8月1日~9月19日は漢時代の料理、9月20日~11月5日は唐時代の料理)、ランチコース三〇〇〇円、ディナーコース七〇〇〇円(ともに税・サービス別)

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