甘口!チェーンストアを誉めちぎる(4)本当の「松屋」はすごい
松屋が売上げを大きく落とした原因は、マクドナルドなどハンバーガーチェーンの“平日半額”もあるが、ここ数年急激に店舗数を増やしているオリジン弁当、ほっかほっか亭などの持帰りデリカ、POT&POT、バルチックカレーなどのカレーショップ、石焼きビビンバや、めしや丼、てんやなどの丼チェーン、小諸そば、富士そばなどの立食いそば、これら勢力の急激な店舗拡大である。
それに輪をかけるように、食べ放題、バイキングのまん延である。そして新規店のほとんどが、都心に集中している。だから都心型松屋の売上げが急減に悪化しているのである。
だから松屋は駄目なのか? というと、そうでもない。専門家の目から見たら松屋は“すごい!”のである。特に、松屋のキッチンオペレーションは抜群である。以前、季節メニューだった「煮込みハンバーグ」は、グリル鉄板でハンバーグを軽く焼いて、マイクロオーブンで温めて出されるものだったが、こんな本格的な料理をファストフードが出すなどと聞いたことがない。牛丼しか調理できない厨房では考えられない重装備のキッチンを松屋は持っている。
また、もっと驚くことがある。それはコールドドロアー(引き出し式冷蔵庫)である。定食物には、コールスローサラダがついて来る。このサラダは、このコールドドロアーに収められている。ここまでマテハン(マテリアル・ハンドリング)で考えられているキッチンを、アルバイトが運営しているのである。
アルバイトのトレーニングマニュアルを見ると、非常に細かいチェック項目が並んでいる。これを先輩が新人にマン・ツー・マンで教えているそうだ。こうした高度な取り組みを見せる松屋が、単品勝負のチェーンに負けるわけが無い。
ロードサイド店の不振、多業態化の挫折など課題は多い。しかし、ここまで丹念につくり上げてきた仕組みを大いに生かし、松屋にぜひ着実に前進してもらいたいものである。
(甘太郎)