新店ウォッチング:「パスタフローラ」立川南口店

2001.03.05 223号 4面

昨年の1月に創業したばかりでありながら、すでに四店舗の出店を果たし、インターネット上の楽天市場での商品販売やFC加盟店募集など急速な展開で業界の話題となっているインターフード・テクノロジーズ社が、昨年12月にオープンした「パスタフローラ」の新店を訪れた。

同社の丸山社長は、昨年一部上場を果たしたドトールコーヒー社に長年在籍し、主力業態のコーヒーショップやパスタ店チェーンの立ち上げを支えてきた立役者であるが、その丸山氏が一昨年ドトール社を退社した後、一年近い充電期間を経て二〇〇〇年の初頭に設立したのがインターフード・テクノロジーズ社だ。

立川南口店は、同社の一号店である妙典店(千葉県市川市)と同じ「欧州の片田舎風カントリーキッチン」と呼ぶコンセプトの店舗で、温かみを感じさせ音響効果も良い自然木をふんだんに使用した店舗デザインが、同社のこだわりである「ナチュラルフード」のイメージを巧みに表現している。

また、パスタフローラ店に共通する特徴のひとつは店頭のポーチである。二席ほどのテーブルを設けて古材風の木板で演出されたポーチ席は、機能面でも重要な役割を果たしており、ピーク時にはウエーティングスペースとして、暖かい季節には外気を感じながらのティータイム席として、とさまざまな使い方が可能だ。

しかも、ほとんど女性スタッフだけで運営が可能なこの業態の投資コストはおよそ一五〇〇万円ほどであり、開業後一五ヵ月で投下資本を回収できる驚異的なビジネスモデルとして、募集を始めたFC加盟希望者からも問い合わせが殺到している。

しかし、同店の魅力は何と言ってもその商品にある。メーン商品は、インターネットでも販売している独自製法の「生パスタ」を使ったスパゲティ類(五〇〇円~八〇〇円)であるが、店名の「パスタフローラ」(粉で出来た生地)が意味するように、同社がテーマとしているのは決してイタリアンとしてのパスタではなく、「小麦粉を主原料」とするあらゆる料理であり、それを添加物や農薬を使わないオーガニック・フードとして提供するというコンセプトで、小さな子供を持つ主婦たちにも好評だ。

さらに豊富なデザート類も女性に人気の高い理由のひとつである。

そのほかにも、お代わり自由の「八穀パン」(八種類の穀物を使用)は二五〇円、本格的なエスプレッソマシンを自分で操作して、コーヒーどころかカプチーノまで好きなだけ楽しめるドリンクバーは二〇〇円という驚きの低価格で、例えば、「スープ」「パスタ」「パン」「コーヒー」「デザート」の五品を注文しても、二〇〇〇円でおつりがくるほどのリーズナブルな価格帯であり、近隣の客にとっては毎日でも通いたくなる利用頻度の高い業態といえるだろう。

同社は、大手商社の伊藤忠商事が金融系企業などと設立した飲食ビジネスサポート会社へ、チェーン化に関するノウハウ供給などの提携も行っており、その展開が大いに期待される注目企業のひとつとなっている。

◆店舗データ

「パスタフローラ」立川南口店(東京都立川市柴崎町二‐三‐三)経営=(株)イタリアン・キッチン、FC本部=(株)インターフード・テクノロジーズ(東京都港区南青山四‐一七‐一二、クレセント青山一〇七)、開業=二〇〇〇年12月21日、店舗面積=一五坪、客席数=二六席、営業時間=午前11時~午後10時

◆取材者の視点

「無添加・無農薬」や「店舗で手づくりのナチュラルフード」といった同社のうたい文句を裏付けているのは、丸山社長の片腕である河邉専務の力によるのも大きい。

河邉氏は、長い間、食品分野の研究所で研究者として働いていたという経歴の持ち主で、食品の組成や加工をはじめ、栄養素などに関するエキスパートである。

周囲からの強い要請による急ピッチの出店で、同社の店内オペレーション自体には、まだぎこちない部分も見受けられるが、商品自体の魅力がそれを補って余りある。そして、何といっても商品の強さがチェーンの底力を生み出すのも事実だ。

米国では、ITバブルが崩壊しはじめた昨年あたりから、ニューヨークなど都市部の飲食トレンドが「コンフォート・フード」と呼ばれる素朴な家庭(郷土)料理風のものに移行しつつあるところで、この店のコンセプトは、必ずしも意図したものではないにせよ、結果的に、まさにこの最新トレンドを先取りしていると言える。

千年紀の変わり目という変革の時代を象徴するかのような同社の急激な展開ではあるが、これまでに成功した多くのチェーンがそうであったように、創業期には、冷静に将来を見すえたシステムの基礎づくりとともに、周囲を巻き込んで強力に出店していくという力技をも併せ持つ必要があるのだろう。

近年、何かと話題となっている他の都市型チェーンの多くとは、ひと味違っている。それは、多店舗化を明確に視野に入れたうえで、システマチックに組み立てられた小商圏型のスタイルと商品力によるもの。同社のこれからの動向には期待が高まっているようだ。

◆筆者紹介◆

商業環境研究所・入江直之=店舗プロデューサーとして数多くの企画、運営を手がけ、SCの企画業務などを経て商業環境研究所を設立し独立。「情報化ではなく、情報活用を」をテーマに、飲食店のみならず流通サービス業全般の活性化・情報化支援などを幅広く手がける。

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