ザガットサーベイに見る流行最前線の裏側(1)イタリア料理編

2001.05.07 227号 27面

民主主義、というと「平均的」であったり「一般的」であったりを真っ先に思い浮かべる。だから民主主義的な手法で評価する、を旨としている“ザガット”というシステムで選ばれる店が「平均的に素晴らしいか?」というと決してそうではなく、むしろ「特別で一般的でない」店であるという痛快な矛盾に出合うことがある。

イタリア料理で一位となった「クッチーナ・ヒラタ」はまさにそうした店で、この店はすべての人に開かれた店では決してない。メニューすらなく、呪文のように告げられる商品名から自らの想像力を駆使して今宵ひとときの献立を決めなくてはならない面倒に、まず普通の人であれば辟易するだろうし、必ず想像したものとは異なる商品に対面することとなる厄介に、やはり普通の人であればやりきれなさを感じるだろう。何よりも店全体を覆う、秘密クラブのような濃密な雰囲気に息苦しさを感じる人も多いと思う。

しかしそれらすべてが「自らの想像力を信じ、絶えず驚きを求める人達だけが集う食空間の一部になりたい」人にはかけがえのない価値を持って輝き始める。そうした店が偽物の民主主義が跋扈する東京という街にある、という事実こそがナンバー1イタリアンの本当の意味だと、ボクは思う。何しろここはレストランではなくて「平田さんちのキッチン」なんだから、それで当然ということなんだろうネ。

((株)OGMコンサルティング 常務取締役 榊真一郎)

〈ザガットサーベイ東京のレストラン2001年度版イタリア料理部門の第一位〉

◆クチーナ・ヒラタ/港区麻布十番二‐一三‐一〇、電話03・3457・0094=麻布十番、「相変わらず」「客を値踏みする」接客を「不愉快」に感じる人もいるが、「洗練された」「繊細かつ大胆」で「うまい」料理は今回も「都内イタリアンの中でも一級品」と格付けされた。例のマダムも「仲良しになれば強い味方となる」というが「もう少し安く」なけりゃ、一般人にはとてもとても。手頃さを求めるなら「二階のヴィノ・ヒラタ」へ。(ザガットサーベイ東京のレストラン2001年度版から)

以下上位六店

◆アロマ・フレスカ/渋谷区恵比寿二‐二二‐一〇、電話03・5449・4797

◆ラ・ゴーラ/港区六本木七‐四‐五、電話03・5410・5550

◆トゥリオ/渋谷区渋谷二‐三‐七、電話03・3400・6062

◆アッカ/渋谷区広尾五‐一九‐七、電話03・5420・3891

◆ラ・ベットラ・ダ・オチアイ/中央区銀座一‐二一‐二、電話03・3567・5656

◆グッチーナ/世田谷区三軒茶屋一‐六‐一三、電話03・6795・5587

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