シーフード調理学(4)イカ<4>胴肉質の第四層外皮が硬さの原因
イカにはたくさんの種類があります。
甲イカは、肉は薄いですが美味で生食(刺身)に向いております。アオリイカは、肉は厚く甘みが強いのでこれまた刺身に適しております。スルメイカは刺身にも使えますが、味がよいので素干してスルメにするのが最適です。
小さなホタルイカは昼間は深海にすみ、夕方岸辺の浅海に集まる富山湾の名産で、天然記念物ですが、味もよく、生食で姿のまま食べたら(姿食い)、甘みといい、うまみといい“最高の味”といえるでしょう。
一般的にはゆでたものが出回っております。モンゴウイカは、日本南西域で捕れるカミナリイカのことですが、最近はアフリカ西岸で捕れる大型のヨーロッパコウ(甲)イカを主とするコウイカ類をさしてモンゴウイカといっております。前にも紹介しましたが、すし種、天ぷら用によいでしょう。
イカを焼いたり、煮たりした時に丸まったり、肉質が硬くなったりしますが、これは胴肉質の外側にある皮によります。
胴肉の外側は四層からなっていて、第一層と第二層との間に色素の細胞があり、鮮度のよいときには、緑がかった赤褐色の色素をもっております。
イカの皮をむくと、この第一層と第二層は比較的簡単にむけますが、その次の第三、四層は胴肉についていて、なかなかむけません。さらに第四層はコラーゲンという硬いタンパク質が繊維状に体軸に沿って走っていて、これまた硬い皮です。この皮が残っておりますと硬くてかみ切れません。
このような時、プロはふきんなどでこすり取ったり、一~二秒熱湯にくぐらせて、すぐに水につけて冷やしてからむくなどの方法をとっております。
イカ肉を加熱すると収縮したり、丸まったりするのは、胴肉の筋肉繊維と第四層のコラーゲン繊維の性質によって左右されます。加熱しますと胴肉の筋肉繊維は体軸に対して直角に収縮し、第四層は体軸に水平に収縮するのですが、第四層の皮の収縮力が強いために、体軸に沿って丸まるのです。
そこでプロは、イカを焼いたり煮たりするときに、胴肉の表面に切れ目を入れるのです。それが「かのこイカ」「布目イカ」「松笠イカ」などの調理法であり、「イカのウニ焼き」などの焼き物の際に胴肉の中に竹串を刺す理由です。
(ニューデリカ通信編集長)