シリーズ・繁盛店の厨房(11) 食器洗浄と人体動作
どの業種にも共通した厨房といえば、食器洗浄場がある。もっとも、使い捨て食器を使っているファストフード店は例外であるが。
食器の汚れの大方は、食後、食器に付着した食べ残しなどのことで、これを大別すれば、でんぷん・脂肪・タンパン質であり、ときには口紅なども付着していることがある。
でんぷん質は、水分のあるうちに布巾や、スポンジなどで軽くこするとすぐ落ちる。しかしいったん乾くと固く食器にコビリ付いて、爪を立ててもすぐ取れない。そこでしばらく湯水に浸けると落ちやすくなるのはご存じのとおり。しかしでんぷん質は、浸漬する水温が高くなるほどに軟化溶解する速度が速くなる。
また、脂肪分もでんぷん質と同じように、高温湯ほど早く溶解する。約六〇度C以上で溶け始め、湯の表面に浮き上がってくる。
タンパク質の多くは理論的に、加熱により五〇~七〇度Cで変性固化する。したがって、変性前の蛋白質の汚れは、五〇度C以下の洗剤液に浸けて取り除かなければならない。
しかし大多数の料理は、既に加熱調理されて変性済みである。食品の成分中には脂肪も含まれ、加熱調理時に油分を添加などして、脂肪膜に包まれた状態であるところから、全く脂肪性の汚れと同じと考え、脂肪分を落とす洗浄方法でよいことになる。
次に、口紅の主成分は油と蝋であるから、茶渋と同じように熱湯と洗剤で溶かして落とす。
合成樹脂製の食器は、一般的には僅少ではあるが吸水性があり、汚水が吸着しやすい。したがって長期使用した場合は、食器の漂白処理を行う必要がある。
《食器洗浄の手順》 少量の食器を洗浄するには、一般的に各家庭台所で行っているように、大ぶりの一槽シンク内の小桶に洗剤、スポンジなどによって軽くこするように汚れを落とす。続いて蛇口を開いたまますすぎ洗いをする。
しかし大量の食器洗浄の処理には、このような方法では非能率で、少なくとも二槽以上のシンクを使うと都合がよい。理想的には三槽シンクで、この使い方の手順は、
① まず残滓を落とし、第一槽につけて食器に付着した汚れを大まかに落とす。
② 次に洗剤をといた第二槽でスポンジなどでこするように汚れを完全に洗う。
③ 第三槽では常にオーバーフローしている豊富な湯量ですすぎ洗いをして仕上がる。
要約すれば、左手に食器をもち、右手のスポンジでこすり洗いをする作業を遂次一槽・二槽と連動して左手側に洗い上げるのが順手ということになる。
厨房コンサルタント
島田 稔