めざすは一流MISS料理人:広味坊祖師谷大蔵店料理長・五十嵐美幸さん

2001.07.16 232号 10面

昭和49年生まれの二六歳。三年ほど前から父の店(千歳烏山店)を任され、昨年3月、祖師谷大蔵店オープンとともに料理長に就任した。若いが仕事歴は長い。

「洗い物、まかない食作り、店の掃除など、小学校三年のときから店の手伝いをしていました。厨房に入ったのは高校時代。父(久夫氏)の料理は、日本の旬の食材を中国の技法でつくる創作中国料理が中心。そのためこのころから築地へも通いはじめました」

高校卒業後、本格的に料理に取組む一方で、週一回「竹爐山房」の山本豊シェフのもとに通う。

「料理の基礎は父に、そして医食同源や素材に対する思いやりなど、料理の心については山本さんに学びました。いまも仕事の相談など、よく助けていただいています」

約三〇種類あるメニューは、ほとんどが広味坊オリジナル。なかでも、アボカド、ユリ根、ブロッコリーの色鮮やかな「たらば蟹と雲丹と卵白の炒め」(一九〇〇円)、アワビを煮込んだソースにエビ、ホタテを入れてサラサラに仕上げる「リゾット風チャーハン」(一五〇〇円)は「ほかでは食べられない味」と人気だ。

「中華は火と鍋の使い方が決め手です。精神的に疲れていたり、不安や迷いがあるとそれが料理に出てしまう。修業というのは調理ではなくまさに精神修業なんですね」

店は八卓三六席。昼は五~六回転、夜も四回転と盛況だ。平均年齢二四歳のスタッフは調理、ホールスタッフ合わせて六人。若い活気にあふれている。

「これまでは好きな料理だけをやっていればよかったのが、今は店を繁盛させて、スタッフの生活保障まで考えなければなりません。責任の重大さをひしひしと感じます」

「店は団体生活。スタッフとは課題を一緒に考え、ともに成長していきたいですね」

年内にはさらに、女性だけの店をオープンさせる意気込みだ。

●料理人を目指す女性の後輩へ

私自身、女性料理人を増やしたいと思っています。うちの店の厨房も三人は女性。女性同士だと意思疎通もしやすいですね。体力不足は厨房のカウンターを低くしたりなど、設備でカバーできます。これからは女性もぜひ手に職をもって活躍してほしい。

●いちおし食材

塩蔵したイシモチをびん詰めのオイル漬けにしたもの。イシモチを細かくほぐし、少量のオイルとともに隠し味に使う。野菜炒め、炒飯、前菜のたれ、揚げ物の下味などに最適な調味料だ。香港では、おもに炒飯に使われているという。クセのある風味は玄人好みのアクセントになるとして、料理長が手放せない愛用の一品である。

▽問い合わせ=萬勝商事(株)(神奈川県横浜市中区、045・662・1694)

●プロフィル

◆いがらし・みゆき=昭和49年東京都生まれ。家族は父、母、兄、妹、高校生の弟。妹さんも現在、千歳烏山の店で修業中。息抜きは「休みの前日にスタッフらと飲みに行くこと」。

◆広味坊祖師谷大蔵店=東京都世田谷区砧六‐三九‐三、03・3416・0004

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら