痛快!脱サラ成功一直線(1)群馬・館林の焼き鳥居酒屋「鳥丁」

2001.07.16 232号 14面

知人に、高橋旺容(おうよう)という五七歳の男がいる。彼は、群馬県館林市の郊外で焼き鳥居酒屋「鳥丁」を経営している。人も通らぬ郊外の道路際に、ポツンと建っている一軒の居酒屋、それが鳥丁なのである。

旺容氏の人生は、波瀾万丈であった。岩手県出身の彼は、大学受験に失敗し自衛隊に入るが、衛生兵となり、ひまを持て余しながら受験勉強に励んだ。そして見事大学に合格。もち論在学中は遊びほうけて暮らす。卒業後、持ち前のガッツで漬物屋のトップセールスマンとなる。

浮気もした、けんかもした、馬鹿なまねをいっぱいやってきたという旺容氏。一時、群馬県の大手スーパー内でファストフード店を開業し大成功。チェーン店を五店まで拡大したが、人が育たずつまずいた。小さな持帰りの焼き鳥屋を始め、五年前ついに郊外に一四・五坪の焼き鳥屋を開店。旺容氏にとって、この鳥丁が人生最後の挑戦だった。そして今、大繁盛を実現しているのである。

焼き鳥屋といえば、路地裏の小汚い店を思い起こすが、この鳥丁はそんなうらぶれた焼き鳥屋ではない。群馬県館林市にも、ご多分にもれず不況風が吹きまくっている。しかしここだけは違う。どうして、こんな寂れた所の焼き鳥屋がどうしてこんなに繁盛しているのか、訪れる人たちは一様にいぶかしむ。

●繁盛理由の第一が、新鮮な食材である。契約している近在の養鶏農家から、その日の朝びき鶏を丸ごと仕入れている。これが、有名地鶏を業務問屋から高値で仕入れている、ほかのありふれた焼き鳥屋とは全く違う。

仕入れた鶏は午前中から仕込みにはいり、三〇種類以上の焼き鳥串に仕上げてゆく。こういった頑固なこだわり姿勢が、お客様を感動させずにはおかない。特に、鶏刺身がよく売れるわけはここにある。

●繁盛理由の第二は、サービスである。客席を取り仕切るのは奥さんと娘さん。奥さんは、武蔵野音大を出たれっきとしたピアノ教師。娘さんは東京女子大卒業というインテリ家族。気配りとはこういうものなのかと感じさせる、素晴らしいサービスに感動し通いつめるファンが多い。

●繁盛の理由第三は、立地である。ここは郊外のロードサイドである。しかし隣には、常時スポーツイベントが開かれている館林一の市民体育館があり、この道路の突き当たりに市内一のショッピングセンター「アゼリアモール」がある。ゆえに、生活道路で乗用車が多い。

周りには何も無く、夜になると真っ暗。信号で止まると鳥丁の看板が真正面に見える。

午後5時からの営業だが、お店はほとんどいつも満席。夕方7時~9時のピークタイムには、お店に入れないで外で待つお客さんもいるようだ。

新鮮でうまい焼き鳥、感じのよい気が利くサービス、そして的を得た立地。この三拍子そろった郊外焼き鳥屋こそ、旺容氏の波瀾万丈人生の賜物である。今、見事にそれが花咲いた。

この頑張るオヤジと優しい奥様に、いつまでも元気でと祈りながら乾杯!

◆香子夫人からの一言

このたび、近くに念願のマイホームを建てました。主人が今までの「ご苦労さん代」として、高価なグランドピアノを買ってくれました。いろいろ苦労はありましたが、今はこれで良かったとホッとしています。これからも、お客さんに喜んでもらえるように頑張ります。

◆売れ筋メニューベスト5

(1)新鮮鶏レバー(150円)(2)鶏わさ(580円)(3)新鮮鶏レバー刺(500円)(4)ねぎ間(150円)(5)ささみ(250円)

◆焼き鳥居酒屋「鳥丁」/店舗面積=一四・五坪/代表者=高橋旺容(57)/所在地=群馬県館林市松原二‐二一‐一/年間売上高=約四〇〇〇万円/取扱品目=焼き鳥、鶏料理

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