大学紹介:「西武文理大学」サービス産業の人材育成目指す

2001.11.19 240号 8面

レストランやホテルなどのサービス産業にふさわしい人材養成を目指し西武文理大学では平成11年、日本初の「サービス経営学部/サービス経営学科」の四年制大学を開学して話題を呼んだ。現在は三学年までの学生八百数十人が学んでいるが来年は一期生の就職活動が本格化する。

米国ではフードサービスやホスピタリティーを教える学部や学科が大学にあり、専門知識を学んで実践の場に出ていくという体系があるが、日本でこうした専門機関ができたのは初めて。ホテルや旅館の市場規模は一〇兆円、外食の市場規模は三〇兆円もあるのに、教育制度がないことがこれまで指摘されてきた。佐藤英樹学長は、「学者ではなく、実務者を養成できる生きたサービス経営の大学にしたい」として、実業界と大学の距離を近づけ、民・学が一体となった教育で、サービス産業の社会的地位を高めることに情熱を燃やしている。

同校は、平成11年4月に前身の文理情報短期大学を改組転換して設立された。系列の西武学園文理中学・高等学校は、県下では有数の進学校として知られ、現役合格率七四%、毎年一〇人近い東大合格者を出している。こうした実績を生んだのも、高校・中学の校長も兼ねる佐藤英樹学長独特の「個々の能力を生かし、やる気を育てる教育」のたまもの。

ガウディなどの芸術品やマスコットのクマのぬいぐるみがいたるところに置かれた、キャンパスは、クマ学長の愛称で親しまれる佐藤学長のユニークな教育方針を物語っている。

大学の入試も、自己推薦の受験者には「サービスの鉄人・アウトドア料理入試」の実技課題で、顧客サービス職の適性を見るという一風変わった試験を行っている。

佐藤学長自身がもともと料理人の出身。東京農大で栄養学を学ぶ傍ら、服部栄養専門学校で調理技術を取得し、コックの道へ。西武栄養料理学院など専門学校も設立している。

今回日本初となった大学のサービス経営学部では、観光・情報・福祉・流通など各分野の履修科目に加え、各界のプロフェッショナルを招いた「ゲスト講話」や、企業の仕事を実際に一年生から体験するインターシップ(フィールド実習)の導入で、現場のサービスやホスピタリティーを学ぶ機会を積極的に取り入れている。

また、学生の礼儀作法、授業の出席率には厳しく、週に二回スーツ着用の日を設けたり、校舎内に学生の出席率ランクを張り出すなど、サービス産業にふさわしい人間形成の場としての教育にも力を入れている。

外食産業も今後は人材の育成が課題。企業が一から教育するのではなく、将来の幹部候補生として採用できるような、適性と実践力のある人材を専門機関が育てていく仕組みづくりが期待されている。

◆“クマ学長”推奨「ガッテン節」 西武文理大学学長・佐藤英樹氏

学長室の椅子に、学長の代わりにデンと座っているのは、大きなクマのぬいぐるみ。クマは学園のシンボルだ。「人は生まれながらにして、だれでもたくさんの能力を親からもらっている。その能力という字の下に、感謝・奉仕・忍耐・信用の四つの足跡(点々=、、、、)のついたものが“熊力”だ。そして、その足跡のひとつだけ大きく伸びたものが“心”になって、それが“態力”です」と、学長はクマ道について熱く語る。

また、イベントで全員が唱和するのが、学長自作の「クマ親父の小言節(ガッテン節)」だ。「人に腹を立てるな、ガッテン!」など二〇項目以上のガッテンを、こぶしをひいて大きな声で叫ぶ。

ガッテンとは「了解・納得した」ということ。ガッテン節を詠えば、身体も心も明るく楽しくなるという。「技術を教えるより、サービス産業のハートをどうやって教えるかが一番大切」と、ユーモアいっぱいのクマ哲学も披露した。

◆さとう・ひでき/昭和10年6月山梨市生まれ。東京農大農芸化学科で栄養学を学びながら、服部栄養専門学校で修業、その後、同校で教鞭をとる。ホテルのコック、レストランの経営などを経て、41年西武栄養料理学院設立を皮切りに、47年西武調理師専門学校、56年西武学園文理高等学校、平成5年西武学園文理中学校などを次々と設立。11年西武文理大学サービス経営学部を開学。学校法人「文理佐藤学園」理事長。

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