売れる惣菜 材料・調理法・応用のヒント(3)天ぷらメニュー編
◆売れる調理のポイント
いわゆる「天麩羅」(てんぷら)は、江戸時代から伝えられた代表的なメニューの一つ。高年齢層の支持率が高いだけに、プリフライ(油調)ではない、本格的な「花の咲いた」ものが要求されている。
しかし、油など調理技術的な問題があって、なかなか客の要求を満たすのがむずかしいメニュー。調理の基礎を知らぬものがへたに手を出すと、大恥をかきかねない。
いまメニューとして求められていることは(1)天ぷらの衣に花が咲いている(2)衣がカリッとしていておいしそうに見える(3)油が酸化していない(4)主材料(エビ、イカなど)の身がきちんと入っている(5)見た目が良い‐‐などであるが、これらを整理すると「見た目の良さ」と「油の問題」の二点にしぼられてくる。
技術をレベルアップすると、その日から注文が相次ぐことになる。それには基本のマスターがまず前提となる。
◆業務用食材のポイント
江戸時代の「天ぷら」は、その場で揚げて食べさせる屋台店がほとんどで、使った材料も江戸前の握りずしと同じように周辺で捕れた小魚(江戸城の堀など)や野菜、東京湾で捕れた魚介類などのようであった。
当然、すべてが旬のものであり、冷凍物などは全くない。天ぷらの材料は新鮮であればあるほど“おいしく揚がり”、客の目前で調理する「座敷料理」もかなりあったようだ。
ただ現在は望むべくもなく、エビ一つとっても中国や東南アジア、メキシコなど輸入品で占められており、国産はシャリ(ご飯)だけといわれるすし同様、国産は「かき揚げ」の野菜ぐらいのものになっている。
イカなどもロールイカ(むき甲イカ=冷凍)などの方がさばく手間が省けて使いやすく、解凍さえうまくできれば国産に比べ、遜色もない。大正エビなどは凍結技術のレベルが上がり、中国産と国産の差は、ほとんどない。
◆イカの天ぷら
●材料/イカ(冷凍スルメイカかむき甲イカなど)、小麦粉、溶き衣(オーマイ天ぷら粉、卵)、調味料(揚げ油(1)サラダ油一〇〇%(2)サラダ油+ごま油九対一か八対二の割合)
●作り方/(1)冷凍スルメイカの場合はまず解凍作業から(流水解凍がよい)(2)イカの内臓類と足を抜く(足は別にゲソ揚げや塩干などに使う)(3)エンペラ(耳)の付け根に包丁を入れてはずす(4)指先に塩をつけて皮をむく(薄皮も丁寧にむく)(5)揚げたときに丸まらないように切り込みを入れる(むき甲イカの場合は解凍してから松かさ状に切り込みを入れる)(6)小麦粉を薄くつける(7)溶き衣をつける(8)一八〇度Cの油で揚げる。
●応用のヒント/業務用としてイカを使う場合は、流通の主体になっているスルメイカ(冷凍)や「むき甲イカ」(ロールイカ)を使うことになるが、まず大切なのは解凍作業。調理においては皮が丸まるのでイカの種類を問わず切り込みを入れること。薄皮を残さない。
◆野菜のかき揚げ
●材料/ニンジン、春菊、玉ネギ、グリーンピース、小エビ、小麦粉、溶き衣(オーマイ天ぷら粉、卵)、調味料(揚げ油(1)サラダ油一〇〇%(2)サラダ油+ごま油九対一か八対二の割合)
●作り方/(1)ニンジン(せん切り)、玉ネギ(薄切り)、春菊(ざく切り)をそれぞれカットする(2)野菜に小麦粉を入れて混ぜ合わせる(3)冷水に卵を溶き天ぷら粉と混ぜる(4)衣と野菜を混ぜる(5)小エビ、グリーンピースに溶き衣をまぶす(6)揚げる前に小エビ、グリーンピースをのせる(7)一六〇度Cの油でゆっくりと揚げる。
●応用のヒント/小エビの代わりにハム(小口切り)やゴボウ(ゆでたものをせん切り)を使ってもよい。ハムと合わせる場合は、ハムを厚く切り、短冊にするとよい。またチーズなども同様に面白い。
野菜のかき揚げはエビ天、イカ天に次いで人気があり、ベーシックなメニュー。寄せ揚げがポイントになる。