御意見番・安売り競争の行き先を憂う:小松田勝・M&Nオフィス代表

2002.01.07 243号 6面

この数年の日本社会におけるディスカウント傾向は、バブル崩壊後の「価格破壊」「価格崩壊」と騒がれた一連の流れの延長線上にあり、まだまだ日本が本格的な景気の立ち直りを見せない中で、一段の企業努力が求められている結果です。

そのため旅行業や宿泊業、航空チケット代や衣料、また住宅や車、生活雑貨など、さまざまな業種にディスカウント傾向が広がっています。

外食も同じ状況にあり、マクドナルドが仕掛けたハンバーガー戦争から、昨年は牛丼戦争、そして焼き肉や居酒屋、カフェなどのし烈なディスカウント競争が繰り広げられるに至りました。

消費者を資産的に区分ける「マーケット・トライアングル」という理論があり、“金持ち”から“貧乏”までを上から、三~五%の「スキミング層」、一五%の「イノベーター層」、三五%の「フォロアー層」、そして四五~四七%の「ペネトレーション層」という四段階に分けていますが、日本がバブルで沸いていたとき、見せかけ的なスキミング層やイノベーター層が増え、株価が上がり、高額商品が飛ぶように売れ、人件費なども上がり、日本はわが世の春をおう歌していたのですが、それが崩壊し、今度はその逆にフォロアー層や、“値段が安ければとりあえずよい”というペネトレーション層が増えてしまったのです。この状況が社会的なディスカウント傾向の地盤をつくっています。

現状11月には戦後最悪の企業倒産件数と五%を超える失業率、また昨年12月には英国中央銀行が「世界金融のリスクの源」として、経済危機に陥っているアルゼンチン、トルコに加え日本を挙げるまでになっており、暮れにも青木建設やマイカルなど、大手企業の倒産や、松下などの赤字、そしてリストラによる大量早期退職制などの実施や解雇などにより、未だ“不況”から脱出できるような光明が見えておりません。

一般的には、政府が積極的な経済対策を実施したとしても、それが社会に反映してくるのは半年以上も先ですし、現状はそのような対応を図る状況ではありません。また日本には、一昨年の半ばまで米国の好景気を支えたITのようなニュービジネスのあてもない状況ですので、残念ながらまだこの傾向は続くと考えられます。

◆小松田勝(こまつだ・まさる)マネジメント&ネットワークオフィス代表。昭和26年東京生まれ。慶應義塾大学中退。大学中退後、米国「シズラーステーキハウス」の日本展開でオープニングマネジャー。後、各種飲食店のオープンマネジャー、スーパーバイザーを経験。東京ディズニーランドのオープンに当たり食堂部教育リーダーとして貢献。後、人材開発、訓練コンサルタントなど各分野で活躍。

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